アニメーター・イラストレーター・漫画家…“絵”のプロに取材するときのコツを徹底解説!

日本においてアニメや漫画は非常に人気があり、世界的にも評価が高いです。
昔の「アニメや漫画=子ども向け」というイメージはなくなり、今では老若男女の興味を引くビッグコンテンツ&世界に誇れる文化の領域に達していますよね。

そんな中で注目されているのが、アニメーター・イラストレーター・漫画家といった「絵」の職人たち。
そこで今回の記事では、アニメーターやイラストレーター、漫画家の方に取材する際に押さえておきたいポイントや、事前準備・インタビューのコツを解説していきます!

【こんな方におすすめ!】

  • はじめてアニメーターやイラストレーター、漫画家の方に取材をする方。
  • アニメや漫画にあまり詳しくないため、インタビューするのが不安な方。
  • 良い記事を書くために必要な心得やポイントを知りたい方。

アニメーター、イラストレーター、漫画家への取材ニーズが高い理由

アニメーター・イラストレーター・漫画家など「絵」に関する職業の方々への取材案件は、昔よりも増えている印象があります。
この分野の取材ニーズが高まっている理由は何なのか、簡単に考察してみましょう。

理由1)絵の仕事に憧れる学生が多いから

これから進路を決める学生さん達は、アニメや漫画と一緒に育ってきた世代です。
「子ども向けのコンテンツ」として幼少期だけ触れるのではなく、いくつになっても楽しめるエンターテイメントとして、アニメや漫画に親しんでいるのです。
その中で、「アニメを作る仕事がしたい!」「絵を仕事にしたい!」と夢見る学生が増えるのは、必然とも言えますよね。

実際に、アニメーターやイラストレーター、漫画家などの職業は、「なりたい職業ランキング」等にも頻繁にランクインしており、憧れている小中高生は非常に多いのです。
特に、これらの職業に特化した専門学校では、夢をかなえた卒業生のインタビュー記事を学校HPやパンフレットに載せているケースがよく見られます。

理由2)多くの人々の興味を引くコンテンツだから

世間のアニメや漫画に対する興味関心は非常に高く、熱狂的なファンも少なくありません。
有名なアニメ映画監督の取材記事や、爆発的な人気を誇る作品の制作に関わっているアニメーター、ベストセラーの漫画家さんなどの取材記事は、多くの人々から注目を集めることでしょう。

特に漫画がアニメ化されたり映画化されたりするタイミングでは、プロモーションも兼ねて一般のファン向けの取材記事がよく出ていますよね。
また、コアなアニメ・漫画ファンに向けた雑誌やWebサイトでも、アニメーター・イラストレーター・漫画家の方々への取材記事は人気があります。

理由3)活躍するフィールドが広がったから

エンターテイメントとして確固たる地位を築いた後、アニメ・漫画・イラストの需要は、広告などエンタメ以外のフィールドにも拡大してきました。
たとえば、YouTubeなどの動画広告にアニメが使われたり、Web上の商品広告が漫画ベースで作られていたりするのを、多くの方々が目にしているのではないでしょうか。

文章だけで説明するよりも印象に残りやすく「気軽に読んでもらえる」というメリットもあるので、アニメ・漫画・イラストは、近年の広告に欠かせない存在になっています。
また、自身のブログやSNSにイラストや漫画をUPしてバズる作者も少なくありません。
その結果、多様なフィールドで活躍するアニメーター・イラストレーター・漫画家の方々への需要が高くなり、取材記事の数も増えてきているのです。

アニメーター・イラストレーター・漫画家の違いは?

アニメーター・イラストレーター・漫画家は、いずれも「絵のプロフェッショナル」ですが、それぞれのミッションには大きな違いがあります。
なんとなくイメージはできると思いますが、取材の際には明確に理解することが必要になるので、ざっと解説しておきましょう。

アニメーターとは?

アニメーターは、動画やアニメーション制作の中心的な役割を果たす専門家です。
キャラクターやオブジェクトに動きを加える技術を駆使して、物語やメッセージを視覚的に説得力があるものへと引き上げます。

かつてのアニメーターは秒単位の動きをすべて絵にして動きを表現していましたが、近年はコンピューターやCGなども活用されるようになってきました。
その分、「絵を描く」という技術だけではなく、2D、3D、ストップモーションなどの技術を身につける必要があります。
アニメーション業界は非常に厳しく、高い技術力やセンスが求められるため、常に自己研鑽が必要とされる世界です。

イラストレーターとは?

イラストレーターは静止画を中心に、さまざまなメディアやプロダクトに使用されるイラストやアートワークを制作する専門家です。
イラストレーターが活躍する分野は、雑誌、広告、書籍、商品パッケージなど、多岐にわたります。

クライアントや編集者と密にコミュニケーションを取りながら、具体的な要求やコンセプトに基づいて表現を創り出す必要があるため、絵の技術に加えて高いコミュニケーション能力が求められるでしょう。
イラストレーターのスタイルやテクニックは多様で、それぞれのイラストレーターが独自の個性を持っています。
また、漫画や絵画などの創作活動をしながらイラストレーターの仕事を受けている人もいるようです。

漫画家とは?

漫画家は、物語を絵と文章(セリフ)で伝えるアーティストです。
日本において漫画は長い歴史と文化的な背景を持ち、物語としての面白さだけではなく、ときには社会的なメッセージや哲学を伝える強力なメディアになっています。

漫画家には、キャラクターデザイン、ストーリーテリング、ページのレイアウトなど、非常に多岐にわたるスキルが求められます。
また、継続的に高品質な作品を世に送り出すために、ストーリー展開に悩んだり締切に追われたりする厳しい仕事環境は有名です。
漫画は多くのファンに愛されているコンテンツであり、漫画家の取材記事にはたくさんの読者が興味を持つので、多様なメディアで取材記事が扱われています。

アニメーター・イラストレーター・漫画家取材のコツ~①事前準備編~

それでは、アニメーター・イラストレーター・漫画家の方々に取材するときのコツを、具体的に解説していきます。
まずは、対人取材の前に必須の「事前準備」のポイントからです。

取材対象者に関するリサーチを行う

アニメーター・イラストレーター・漫画家の取材で必須なのは、まず過去の作品のリサーチです。
とはいえ、すべての作品に目を通すのは大変なので、創作に関わった作品のタイトルと時系列をざっと把握したうえで、インタビューでメインの話題になる作品や最新の作品については、細かくチェックしておくと安心です。

さらに、もし公開されているものがあれば、作品とあわせて過去のインタビュー記事なども読んで、創作スタイルや特徴、キャリアの流れを理解しておきましょう。
また、インタビュイーが影響を受けた作品や作者についても知っておくと、専門的な言葉や考え方の根底にあるバックグラウンドを理解しやすくなり、深い議論につながりますよ。

記事の方向性に沿って質問リストを作成する

対人取材では、あらかじめ質問をいくつか準備しておくのが基本です。
記事作成にあたって「これだけは外せない質問」をピックアップしてリスト化しておくと、当日のヒアリング漏れを防ぐことができ、話が逸れてしまったときの軌道修正の指針にもなります。

ただし、マストの質問が多すぎると「質疑応答」のようなインタビューになってしまうので、注意が必要。
特に、アニメーター・イラストレーター・漫画家など、クリエイティブな仕事をしている方々の場合は、自由に語ってもらうことで非常に面白い話を引き出せる可能性が高いので、質問リストは「必要最小限」を意識すると良いでしょう。

負担にならない取材日時を設定する

この業界の方々は、常にタイトなスケジュールで動いていることも多いですし、比較的ゆとりをもって活動している方であっても、制作の段階による緩急が非常に大きいです。

「締切前は寝食もままならない」といった状況も「業界あるある」なので、多忙な時期にオファーをするのは完全にアウト
事務所を通して負担の少ない時期をヒアリングし、可能な限り先方の都合に合わせましょう。
一人で活動しているクリエイターの場合は、先方の希望する連絡手段でコミュニケーションを取り、日程を調整してください。

まとまった取材時間が確保できないケースもありますが、そこはインタビュアーの腕の見せ所
限られた時間の中でも有意義なインタビューができるようにがんばりましょう!

アニメーター・イラストレーター・漫画家取材のコツ~②インタビュー編~

次に、インタビューの現場における心得や、対話のコツ・ポイントを解説します。

具体的でオープンエンドな質問を心がける

良質な取材は、単なる質疑応答ではなく「対話」から生まれるものです。
インタビュイーの思考や経験を深く引き出すためには、具体的でオープンエンドな質問の仕方をすることが大切です。

たとえば経歴に関する質問をするとき、ただキャリアの変遷をなぞるだけではなく、その時々のエピソードや思いについて追加質問してみるだけで、得られる情報の量や中身はガラリと変わります。
また、「Yes/No」や一問一答で答えられる質問ばかりではなく、インタビュイーが自分の意見や考えを自由に話せるような尋ね方を心がけましょう。
インタビュイーが自分の言葉で十分に表現するためには、時間的・雰囲気的な「ゆとり」が重要になるので、質問したら相手の回答を静かに待つことも大切なポイントですよ。

相手に対するリスペクトを忘れない

アニメーター・イラストレーター・漫画家など、クリエイティブな仕事をしている人々の中には、独自の情熱や哲学を持っている方が多いです。
インタビュアーは、相手の情熱や哲学を尊重して、理解しようとする姿勢を示さなければなりません。

アニメや漫画は身近な存在なので、インタビュアー自身にも作品や作風に対する好み・考えがあるかもしれませんが、押し付けるようなことはせず、相手の話に耳を傾けてください。
また、作品に関する裏話や制作過程の詳細に関することは、読者にとって興味深い話ですが、クリエイターにとってはデリケートな内容でもあります。
そのため、相手のプライバシーや感情に配慮しながらヒアリングする必要がありますし、情報の公開可否もきちんと確認しましょう。

リラックス&チェックバック

アニメーター、イラストレーター、漫画家などのクリエイターは、作品に対する思いやプロセスを「しっかりと伝えたい」と思ってくれていることが多いです。
しかし、緊張やプレッシャーを感じたり、インタビュアーに不信感を抱いたりすると、本心を話すことが難しくなります

まずはインタビュイーがリラックスできるように、場所選びや雰囲気づくりから工夫してみてください。
取材開始前の軽い雑談や、質問の間に適切なチェックバックや感謝の言葉を挟むことで、心地よい雰囲気を作り出すことができます
特にチェックバックは、インタビュイーの言葉を誤解・歪曲して伝えてしまわないために重要ですし、「話してもらったことを正しく伝えたい」という真摯な姿勢は、相手からの信頼獲得にもつながりますよ

アニメーター・イラストレーター・漫画家取材で役立つ質問例

ここでは、アニメーター・イラストレーター・漫画家のインタビュー記事を作成するために、インタビューでヒアリングしておきたい質問をご紹介します。
記事タイプ別にリストアップしていきますので、ご自身の案件に合わせてセレクトしてみてください。

「経歴」と「展望」は、どんな記事にも役立つ質問!

「これまでの経歴を教えてください。」
「将来の目標・未来のビジョンをお聞かせください。

「経歴」「今後の展望」は、記事タイプを問わずヒアリングして損はない質問です。
経歴はインタビューの“掴み”として、今後の展望は“締め”として使いやすい内容でもあるので、簡単でも良いのでヒアリングしてみると良いでしょう。
記事では大々的に取り上げないケースもあると思いますが、プロフィールの執筆に必要だったり、写真キャプション本文の端々に織り交ぜたりなど、さまざまな使い方ができます。

進学系・リクルート系の記事でおすすめの質問は?

「この仕事を目指した理由・きっかけを教えてください。」
「学生時代に学んだことの中で、今いちばん役立っていることは何ですか?」
「この仕事に就くために必要なスキルや心構えを教えてください。」
「これまで仕事をする中で、もっとも嬉しかったこと・大変だったことは何ですか?」

専門学校のHPやパンフレット、進学・就職情報サイトなどに掲載される取材記事を書く場合は、後輩たちにとって有益な情報や、モチベーションUPに繋がるエピソードを引き出せる質問をしましょう。
基本的にはポジティブな内容中心がおすすめですが、「大変だったこと&どのように乗り越えたのか」という質問をしてみると、仕事現場のリアルがイメージしやすくなりますよ

「人」にフォーカスする記事でおすすめの質問は?

「キャリアでもっとも印象的な作品は何ですか?」
「その作品にはどんな背景や思いが込められていますか?」
「これまでのキャリアにおいて、ターニングポイントがあれば教えてください。」
「作品の特徴や独自性について、ご自身の考えや思いをお聞かせください。」

クリエイターの人となりやバックグラウンドを深堀りして記事にしたいときは、個人の意見や哲学を引き出す質問をする必要があります。
生い立ちや経歴のヒアリングを軸にして、その時々の思いに迫ってみるのも良いですね。
デリケートな内容になるので、相手に対する配慮やリスペクトを忘れずに、様子を見ながら進めるようにしましょう。

「作品」にフォーカスする記事でおすすめの質問は?

「このプロジェクトを進める上で、どのような戦略や方法を取り入れましたか?」
「制作を進める中で、もっとも困難だと感じたことを教えてください。」
「最初にアイデアを思いついたきっかけは何でしたか?」
「この作品の特徴や、作品に込められた思いをお聞かせください。」

新しい作品のPRを目的とした記事や、人気作品の背景を深堀りして読者に届けるタイプの記事では、制作秘話や作品の裏話をたっぷりとヒアリングしたいところですね。
ただし、やはりデリケートな内容なので、こちらからずけずけと踏み込むのはNG
上記のような質問を呼び水にして、会話の主導権を相手に委ねたほうが、ポロリと話してくれることがありますよ!

「仕事」にフォーカスする記事でおすすめの質問は?

「1日のタイムテーブルを教えてください。」
「締切前の多忙なときにも欠かさないルーティンはありますか?」
「この仕事のやりがい・醍醐味と、大変なことを教えてください。」

アニメーター・イラストレーター・漫画家の「仕事の実態」は、クリエイター志望の学生はもちろん、一般の読者にとっても興味深い内容です。
そのため、ファンに向けた取材記事においても、彼らの仕事や生活に関する内容を取り上げるケースがあります。
クリエイターの「リアル」に深く迫った取材記事は、ファンとのエンゲージメントを高めたり、この業界・職業に対する理解と尊敬を深めたり、さまざまな効果を生むことができますよ。

アニメーター・イラストレーター・漫画家 取材記事の例

最後に、アニメーター・イラストレーター・漫画家の方々を対象とした取材記事で、参考になる&おすすめの記事を5つピックアップしてご紹介します。

アニメーター 矢野 茜さんのインタビュー記事

記事タイトル:「好き」が一番の武器になる。若きトップアニメーター・矢野茜が歩んだ我が道

就職後わずか3年で「総作画監督」「キャラクターデザイン」に抜擢された矢野さん。才能豊かな若きアニメーターのバックグラウンドや仕事に対する情熱が、余すところなく語られた必読の記事。総合アニメニュースサイト【アニメ!アニメ!】掲載。

イラストレーター 五月女 ケイ子さんのインタビュー記事

記事タイトル:“好き”だけでは“好き”を仕事にできない、とにかく“描き続けること”が大切

高校生のための進路サイト【進路ナビ】に掲載中の記事。高校生活、イラストレーターを目指したきっかけ、目標を実現するまでの歩み、現在の仕事に対する思いや向き合い方、これから進路を選択する学生へのメッセージなど、将来に役立つ情報が満載!

漫画家 矢村 いちさんのインタビュー記事

記事タイトル:『声がだせない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている』矢村いち「普通の人からしたら当たり前でも、ふたりにしては特別なもの」

Twitterでバズり書籍化に至った作品『声カノ』の詳細に加え、矢村さんの仕事環境やバックグラウンドなど、盛りだくさんの内容。「Twitter投稿時の反応は…」など、SNS発の漫画家さんならではの視点も興味深い。【コミスペ!】掲載。

3DCGアニメーター 小野 英希さんのインタビュー記事

記事タイトル:あの人気アニメのエンドロールに僕の名前があるのは夢中で3DCGを学んだ大学時代があったから。

東京工芸大学 芸術学部 インタラクティブメディア学科のHPに掲載中の卒業生インタビュー。普通科の高校から芸術系の大学への進学を決意した経緯や、在学中の授業や学習環境、卒業後の活躍について、学生が親しみやすい口調で語られている。

イラストレーター 北構 まゆさんのインタビュー記事

記事タイトル:【学生取材企画】キービジュアル制作者に聞く。イラストレーター 北構まゆさん インタビュー!

大東文化大学のWebサイトに掲載された学生取材企画の記事。インタビュイーは同学100周年キービジュアルの描画を担当したフリーランスイラストレーターの北構さん。イラストレーターの活躍の幅の広さや、ものづくりへの情熱などを改めて認識できる記事。

まとめ

アニメや漫画のフィールドで活躍するプロフェッショナルたちへのインタビュー記事は、作品や作者のファン、進路選択を控える学生たちにとって、大変貴重な情報源です。
今やアニメ・漫画は日本が世界に誇れる文化のひとつになっているので、海外の読者の目に留まることも十分に考えられるでしょう。

ライターのミッションは、語り手と読者の両方が「取材を受けて良かった」「この記事を読めて良かった」と思える記事を書くこと。
アニメーター・イラストレーター・漫画家の方々への取材に迷いや悩みがある方は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね!