会計士・弁護士・弁理士・税理士・司法書士・行政書士…士業系の取材に役立つ情報を一挙公開!

高度な専門資格を必要とする「士業」に就いている方への取材は、かなりの緊張感がありますよね。
対等にコミュニケーションが取れるのか、相手が話すことをきちんと理解できるのか、不安になることもあるでしょう。

そこで今回の記事では、公認会計士・弁理士・税理士・司法書士・行政書士など、士業系インタビューのポイントや心構えについて徹底解説したいと思います。

【こんな方におすすめ!】

  • はじめて士業系のインタビューをする方
  • 法務や税務の専門知識がなくても取材が成り立つのか不安に思っている方
  • リサーチするべき内容がわからない・どんな質問をしたら良いかわからない方

士業の種類と仕事内容

ひと口に「士業」といっても、その種類はさまざま。
どの職業の方にインタビューをする場合でも、基本的な仕事内容がわかっていないと成立しないので、まずは主な士業の種類と仕事内容を正しく知っておきましょう。

士業の種類   仕事内容
公認会計士     会計、監査、税務に関する専門知識を持ち、企業の財務状況や業績を評価する役割を果たす。企業や個人の税務相談、企業の財務管理や内部統制の設計・評価なども担当する。
弁護士法律問題に関する助言、訴訟や紛争解決に携わる。企業法務、刑事事件、家族法、不動産法など、多様な分野で活躍。法廷での証拠提示や弁論、契約書作成や審査なども担う。
弁理士特許、商標、デザインなど、知的財産権に関する専門知識を持ち、特許出願の手続きや、特許をめぐる紛争解決をサポート。最新の法律やガイドラインに精通する必要がある。
税理士税に関する法律の専門家。個人や企業の税務報告や法律相談を手がける。税法の変更に対応した助言を行い、顧客の税務リスクを最小限にするための戦略を立案する。
司法書士不動産登記、商業登記、遺言書の作成など、個人や法人のさまざまな法的文書の作成や登記手続きを行う。債務整理や遺産分割協議などの手続きも担当する。
行政書士免許申請、ビザ申請、許認可申請など、各種行政手続の代行やサポートを担う専門家。個人や企業が行政と交渉する際のアドバイザーとしての役割も果たす。

上記のほかにも、社会保険労務士、不動産鑑定士、中小企業診断士など、さまざまな士業が存在します。
インタビューをすることになったら、取材対象者の業務内容について最低限の知識を得ておくことが大切です。

士業系の取材記事が載る媒体と記事の目的

士業の取材記事が掲載されるメディアは複数あり、それぞれに記事の目的(読者に伝えたい内容)が異なります。
そこで、代表的な掲載媒体と記事の目的をまとめてみました。

媒体の種類記事の目的
業界専門誌・    
WEBメディア              
士業に特化した雑誌や新聞およびWebメディア。各分野のプロフェッショナルを特集するインタビュー記事が多い。業界の最新トレンドや事例研究などを提供する重要な情報源。
ビジネス誌や新聞 ビジネスや経済に関する一般的なメディアも、士業のインタビュー記事を掲載することがある。特定の業界の専門家の見解や視点を広く一般の読者に提供することが目的。
学術ジャーナル       特定の学問領域に特化した学術誌およびWebメディア。士業の専門家が知識や経験を読者に共有することが目的。
業界会議・セミナーのプログラム     士業に関連する会議やセミナーにおいて、参加者に配付する資料やプログラム内にインタビュー記事を掲載することがある。
事務所のHP法律事務所や会計事務所などのHP。法律相談や依頼を検討している方に、所属するスタッフの専門性や仕事への取り組み方を照会することが目的。
スクールのHPや資料各種士業の資格取得をサポートするスクールや塾のHPやパンフレット。集客を目的としており、受験勉強の体験談や資格取得後の仕事内容などを紹介していることが多い。
職業紹介サイト  これから進路を選択する学生向けの職業紹介サイト。学校や職業選択のための情報として掲載される。

実際に士業の仕事に携わっていたり、士業に就くことを目指していたりしないと、上記のような媒体・記事を目にする機会は少ないかもしれません。

しかし、インターネットで少し検索しただけでも、まとまった数の取材記事が出てきますから、一定のニーズがあることは間違いなし。
取材から担うライターや編集者としては、士業の方々へのインタビュースキルを、ぜひ身につけておきたいところです。

士業系インタビューのコツと心構え

それでは、いよいよ士業の方への取材に臨むときのコツや心構えの解説です。
士業系の取材におけるインタビュアーの不安要素は、やはり「専門知識」なのではないでしょうか。

実際の取材では、どの程度の専門知識が求められるものなのか、どうすればスムーズに対話ができるのか等を、さまざまなアプローチから見ていきましょう。

事前のリサーチを行う

対人取材では事前のリサーチが不可欠です。
「高い専門性を要する士業のリサーチは並大抵の難易度ではないはず…」と不安になる方も多いかもしれません。

しかし、その点については、じつはそれほど心配しなくても大丈夫。
士業の方々が持つ専門知識は、何年も勉強して会得したものなのですから、インタビュアーが熟知していなくても当たり前なのです。

注力するべきは、インタビュイーの専門分野についての基本的な仕事内容、業界の重要なトピック、インタビュイー個人の過去の業績などを、できるだけ収集しておくこと。
そうすることで、より具体的な質問を準備することができるので、インタビュー中も対話がスムーズに進んで質の高い情報を得ることができるでしょう。

取材目的を明確にして質問リストを作成する

取材の目的を明確にすることは、後々の記事作成のためにも非常に重要なポイントです。
士業系のインタビューといっても、掲載媒体や記事の目的は多岐にわたり、目的によってヒアリングするべき内容が変わります
インタビュイーに求める情報、記事が伝えるべき主題、読者にどんな情報を提供したいのか。
これらを明確にしてから、いくつか根幹となる質問を準備して、リストを作成しましょう。

できあがった質問リストは、取材依頼書と一緒に、取材前の段階でインタビュイーに共有しておくことをおすすめします。
そうすることで、インタビュイーにも取材や記事の主旨を理解して回答を準備する時間ができるので、より深い知識と洞察が引き出されるでしょう。

相手の専門知識を尊重する

士業の方々は、特定の分野における深い知識と実践経験を持つ専門家であり、その知識や専門性は尊敬に値するものです。
インタビュアーは、たとえ自分が不慣れな領域でも、相手が語る専門知識を理解し、適切に伝える役割を担うため、理解が不十分なまま記事作成に進むのはハイリスク

だからこそ、取材中にわからないことが出てきた際には、正直に質問したほうが良いと思っていてください。
あまりにもリサーチが不十分なのはNGですが、わからないことをきちんと尋ねる姿勢こそが、専門知識へのリスペクトを示す場合もあります。
インタビュアーの質問は、あくまで情報を引き出すための手段なので、先方の専門知識を尊重したうえで、「正しく伝えること」を最優先に取材を進めましょう。

相手のスケジュールに配慮する

士業の方々は通常、非常に忙しい毎日を送っています。
夜間や休日にしかアポが取れなかったり、取材に割ける時間が限られていたり、先方が取材中に席を外されるような場面も出てくるかもしれません。
そのため、効率的にインタビューを進めることが求められます。

あらかじめ質問を絞り込んでおき、具体的かつ意義深い情報を短い時間の中で得られるように努力しましょう。
前述した「取材依頼書や質問リストの共有」は、まさに効率的な取材につながる手段のひとつです。
インタビュー中は、つい多くの情報を求めたくなってしまいますが、「深堀り」と「間延び」を区別して、無駄なく進めることが大切です。
取材が終わったら、大切な時間や情報を提供してくださったことに対する感謝の気持ちを伝えましょう。

士業系インタビューのおすすめ質問例

ここでは、士業の方への取材でぜひ聞いておきたい内容や、記事作成に役立つ質問の例をご紹介します。
掲載する媒体や読者ターゲット、記事の目的にあわせてセレクトしつつ、取材に役立ててみてくださいね。

インタビュイーの経歴について

士業になるまでの経歴、その分野を選んだ理由やきっかけ、初めてその仕事に興味を持ったときのエピソードなど。
これらをヒアリングすることで、インタビュイーのパーソナルな背景や視点を読者に伝えることができます。

学生向けの職業選択サイトやスクールや塾のHP・パンフレットに掲載する記事では鉄板の質問ですし、専門性の高い同業者向けの記事においても、読者の興味を引くトピックになりますよ。

従事している・注力している仕事内容

現在どのような業務に従事しているのか、特にどのような分野に注力しているのか等の情報は、学生や顧客に向けた記事で重宝します。
得意な業務内容や分野・仕事において大切にしているポイント等を記事で詳しく紹介すると、顧客が依頼先を選ぶ際に役立つでしょう。

一日の仕事の流れや仕事への思いを伝えることは、これから士業を目指す人々にとって大きなモチベーションにつながります。
仕事を通じて困難に感じること・満足感や達成感を得られる瞬間を尋ねるのも良いですね。

専門分野の課題やトレンド

士業の専門家としての課題や現在のトレンド等は、その分野の現在と未来予測をするうえで重要です。
第一線で活躍する方々が直面している具体的な問題や、その課題が解決した場合の未来像を尋ねてみると良いでしょう。
同時に、その分野のトレンドや、それが今後どのように展開・発展するのか、対応するための戦略や対策についても、ぜひ探ってみてください。

読者層を考えると、特に業界専門誌や学術ジャーナル、会議やセミナーの資料に掲載するインタビュー記事では、ぜひヒアリングしておきたい内容です。

読者へのアドバイス・メッセージ

士業に就いている方々からのアドバイスやメッセージは、どんな種類の記事でも有益な情報になります。

・その士業を志している学生
・同分野に興味関心がある一般の人々
・依頼を検討しており、事務所選びに役立つ情報を得たい人々
・専門分野についての洞察を深めたり、今後の活動へのヒントを得たい同業者

インタビュイーの深い知識や経験を元にしたメッセージは、幅広い読者層に貴重な教訓や知識を与えてくれるでしょう。
記事の締めとしても使いやすい内容なので、ぜひ聞き取りをおすすめします。

印象に残っているエピソードや、成功例・失敗例

これまでのキャリアの中で特に印象に残っているエピソードや経験を紹介すると、記事にリアリティが増します。
また、実際に体験した成功例と失敗例を尋ねることで、インタビュイーの人間性や、その士業のリアルな一面を伝えることができるでしょう。

これらは、読者が共感したり、新たな洞察を得たりするために、非常に重要になってくる要素です。
具体的なエピソードを紹介する際には、プライバシーへの配慮を忘れないようにしてくださいね。

士業系インタビュー記事の例

最後に、ぜひ一読をおすすめしたい士業系のインタビュー記事のご紹介です。
読者層やニーズに合わせて、さまざまな角度からアプローチした記事をピックアップしてみましたので、取材やライティングの参考にしてくださいね!

【coconala法律相談】掲載 弁護士・北條将人氏のインタビュー記事

記事タイトル:「キャリア20年超、司法過疎地の所長を務めた熊本の町弁。「やってみる」精神で切り拓いた半生
熊本を拠点に活動する北條弁護士。司法過疎地への貢献に情熱を注ぐ同氏が、20年超のキャリアの中で解決してきた事例を紹介する。熊本地震での経験や、脚本を担当した「戦国法律相談アニメ」の秘話も必読。

【まちの専門家グループ】HP掲載 司法書士・田中基史氏のインタビュー記事。

記事タイトル:「現役司法書士にインタビューしてみました。司法書士の“魅力”って何ですか?
日々携わっている司法書士の業務内容やエピソード、同氏が仕事に臨む際のポリシー、ユーザーへのアドバイスなどが、読者にわかりやすく簡潔にまとめられている。

【jicpa(公認会計士協会)】HP掲載 公認会計士・梅沢真由美氏のインタビュー記事

記事タイトル:「活躍する女性会計士たち~梅澤真由美さん~
会計コンサルティング会社で代表取締役を勤める梅沢氏。公認会計士を目指したきっかけや受験のこと、現在の仕事内容、仕事と家庭の両立やキャリアビジョンなど、興味深い情報が満載。

【税理士ドットコム】掲載 税理士・和泉潤氏のインタビュー記事

タイトル:「社長の嫁さん」として仕事面を幅広くサポートします
香川県高松市の税理士法人に所属する和泉氏。税理士資格とコーチング技術を活かして活動する中で、税理士として目指すものや仕事に対するスタンスが親しみやすい言葉で語られている。キャッチーなタイトルも印象的。

【LEC東京リーガルマインド】HP掲載 弁理士・前田大輔氏のインタビュー記事

記事タイトル:「弁理士実務家インタビュー 前田大輔
各種士業の中でも業務内容の詳細があまり知られていない「弁理士」について、その業務内容や仕事の魅力・やりがい等が、読者にわかりやすい言葉で語られている。

まとめ

士業系の職業は、非常に専門性の高い仕事です。
大学や専門学校で法務・税務関連の勉強をした経験や、自身がお世話になった経験がないと、士業の方々への取材は「難しい」と感じるかもしれません。

しかし、実際に士業に携わっている方の根底にあるのは、「困っている人に寄り添う温かい気持ち」であることがほとんどです。
「取材前にしっかり勉強しておかないと…」と身構えるよりも、インタビュイーの情熱を引き出すことにフォーカスするほうが、魅力的な記事につながるのかも。
そのためにも、インタビュアー自身もリラックスして取材に臨むのがおすすめですよ!