ドローン業界の取材のコツは?気になる事前準備や取材のポイント、質問例・参考記事も紹介!

近年、注目されている最先端技術の一つといえば「ドローン」。
ドローンの活用はさまざまな分野に及び、業務効率の向上、地域課題の解消、災害対応など、あらゆる問題解決への手立てとして期待されています。

ドローンの活用は政府も積極的に推し進めており、2022年12月5日には「有人地帯での目視外飛行(通称:レベル4)」が解禁されました。
このような背景から、ドローンスクールやドローンパイロットに対する需要も右肩上がりに成長中。

そこで今回は、ドローン関連の取材におけるポイントやコツを解説していきましょう!

【こんな方におすすめ!】

  • じめてドローン系の取材をするため、基礎的な知識やノウハウが知りたい!
  • たまにニュースでは見かけるけれど、ドローンに対する詳しい知識がなく不安…
  • 充実した取材をして良い記事を書きたいけれど、リサーチはどこまで必要?

ドローンが活躍している分野は?

ドローンの定義は、「無人であり、遠隔操作または自動操縦で飛行できる、200kg以上の重量の機体」(航空法第2条22項/2015年改正)です。

もともとは軍事用として開発・使用されていましたが、2010年代頃からラジコンのように娯楽としてドローンを楽しむ人が増え、産業用ドローンも急速に普及してきました。
一般的には「空撮」のイメージが強いドローンですが、産業用ドローンは今どこまで活用が進んでいるのか、主な例を一覧表にまとめてみました。

分野内容
観光・空撮空撮写真による観光地のプロモーション、記録としての航空写真撮影など。ヘリコプターを用いるよりも大幅にコストが抑えられる。ホビーユーザー向けのドローンフィールドが観光資源になることも。
イベントLEDライト付きのドローンを飛行させる等のショー。飛行およびライトの発光も全てプログラミングして実施することが可能。2021年に開催された東京オリンピックの開会式でも、ドローンによる演出が話題になった。
点検・測量  高所や危険箇所の点検・測量。足場を組む必要がない、作業者が安全を確保できるなどのメリットがある。点検対象は橋梁、トンネル、道路、鉄道、屋根、煙突、工場・プラント、発電所など、多岐にわたる。
農林水産ドローンによる農薬散布、作付調査、有害鳥獣対策(有害鳥獣の生態調査、動物の忌避音を発するスピーカー付きドローンによる追い払いなど)、森林調査、魚群探知、海の環境把握など。
輸送・物流ドローンによる物資の配送。物流に課題を抱える山間部や離島では特に期待が高い。医薬品の輸送(医療)や、種苗や資材の運搬(林業)にドローンを用いるなど、他分野においても活用されている。
警備・監視ドローンを活用した機械警備システム、侵入監視サービスで異常発報されたらドローンが出動して写真撮影を行うなど。海水浴場の監視にドローンが用いられた事例も。
災害対応・人命救助被害状況の把握、支援物資の運搬、AEDの運搬、火災の火元および全容の確認、火災原因調査、AEDの運搬、遭難者や行方不明者の捜索など。救助活動の効率化はもちろん、救助する側の安全面でもメリットが大きい。
スポーツスポーツ大会の空撮のほか、ドローンを使ったスポーツ(ドローンレース、ドローンサッカー)なども世界的に人気が高まっている。

ドローン系の取材記事は、なぜ重要?

ドローンの活用分野がわかったところで、ドローン関連の取材記事が持つ意義や目的について考えてみましょう。
ここでは、3つのポイントを挙げて、それぞれについて解説していきます。

ドローン活用の成功事例を共有する

ドローンは認知度こそ高まっていますが、幅広い分野で積極的に活用され始めたのは、ここ10年ほどのこと。
そのため「ドローンが役立つらしい」という知識は持っていても、「効果の実態がわからない」「具体的にどう使えばいいのかわからない」「実際に導入するにはハードルが高い」と、まだ最初の一歩を踏み出せずにいる事業者などは多いと思われます。

取材記事を通して、さまざまな場面で実際にドローンが活用されている実例を紹介し、ドローンがどのような課題を解決し、価値を生み出せるのかを具体的に示すことは、「ドローン活用潜在層」にとって非常に有益なのです。
導入・活用までの過程や課題解決方法なども情報共有すれば、さらに参考になるでしょう。
また、新たな応用分野の開拓や、さらなる技術開発の契機にもなるかもしれません。

ドローンに対する理解を促進する

ドローン活用の幅が拡がり法改正も進んでいるものの、ドローンに対して「怖い」「危ない」というイメージを持っている一般の方々は、まだまだ多い状況にあります。

たしかに、無人の航空機が頭上を飛ぶとなると、「怖い」と感じてしまう人がいるのは無理もないことですよね。
どれだけ安全管理を徹底していても、今までの生活に無かったものを受け入れるのは簡単なことではありません。
そのため、企業や自治体が活用を推進したくても「航路の周辺住民から理解を得るのに苦労した」という事例は、「ドローン業界あるある」のひとつ。

取材記事を通してドローンによって得られる利点や安全管理等の実態を発信することは、一般の人々の理解や安心の促進につながり、ドローン活用の幅を広げる鍵となるでしょう。

ドローン業界に興味がある人への情報発信

ドローン関連の記事は、ドローン業界に興味がある人々にとって、重要な情報源になります。
新しい製品の発売、テクノロジーの進歩、業界の動向、法整備に関すること、それらに対する専門家の意見など、最新の情報を提供することで、読者の理解が深まり、選択や意思決定を行うための助けになるのです。

具体的には、ドローン活用を検討している企業や自治体、ドローン業界への参入を考えている起業家、これからドローン業界の仕事に就きたいと考えている人々などがターゲットになります。

これからドローン活用がますます拡がっていくと、関連企業やドローンスクール、ドローンパイロットへのニーズはさらに高まっていきます。
参入企業や専門家の育成は、近い将来に急務となっていくでしょう。

ドローン系取材のコツ・ノウハウ

それでは、実際にドローン系の取材をするときのコツやノウハウを、Q&A方式で解説していきましょう。

専門知識はどこまで必要?

ドローン系の取材をすることになった際、まず不安になるのが「専門知識」でしょう。
ドローンの機種や搭載されているテクノロジーのこと、法規制に関することなど、ドローン業界は非常に専門性が高く、ニッチな分野であるとも言えます。

ドローン系の取材に何度も臨んでいるプロのライターでも、「機種やシステムの話になると、まったく理解できなかった」「同席するクライアントと取材対象者が盛り上がっている話題に、自分だけついていけなかった」等の苦い経験をしているようです。

しかし、結論を言いますと、専門知識はそこまでなくても大丈夫!
都度「その機種の特徴は何ですか?」「どんなシステムなんですか?」と尋ねれば良いですし、記事化するときに後追いで調べることもできます。

機種やシステムのヒアリングは?

「専門知識はそこまでなくても大丈夫」と前述しましたが、「ヒアリングしなくて良い」ということではありません
専門性の高い読者層はもちろん、ドローン活用や業界への参入を検討している方にとって、機種やシステムなどの詳細は、もっとも欲しい情報のひとつ
特に活用・導入事例の記事では、「この業務にはどんな機種が向いているのか」「この目的で使うためにはどのような機能が必要なのか」などを読者に知らせるため、機能面の情報を充実させたいところです。

ただし、ドローンや関連システムの名称は横文字が多く、はじめて聞く名称を正確に聞き取るのは正直大変です。
ドローンスクールやドローン関連企業等では、使っている機体をHPに載せていることが多いので、インタビュイーの基本情報をリサーチする際に軽く調べておくと良いですね。

事前調査では何を調べればいい?

事前調査では、まずインタビュイーの基本情報をリサーチしましょう。
ドローンスクールやドローン関連企業ならHPがあることがほとんどですし、公式SNS公式ブログを運用している場合もあります。
過去の関連記事などがあれば、そちらもあわせてチェックしておくと良いですね。

個人で活動しているドローンパイロットの方でも、ウェブサイトSNSブログを持っていることがあるので、調べておきましょう。
そのほかには、ドローン関連の法整備に関することや、最新のニュース、業界のトレンドなどに焦点を当ててみることをおすすめします。

インタビューを円滑に進める秘訣は?

記事の目的・方向性と、事前調査した内容を照らし合わせて、「質問リスト」を用意しておくと安心です。
案件ごとに「これだけはヒアリングしておきたい!」という内容があると思いますが、インタビューの現場で話が盛り上がると、経験値の高いプロのライターでも「うっかり聞き忘れてしまった!」ということは普通にあります。

しかし、質問リストがあれば「外せない内容」をしっかりヒアリングすることができますし、話が脱線してきたときにも軌道修正を図ることができるでしょう。
もし可能であれば、あらかじめ作成した質問リストを取材前にインタビュイーにも共有しておくと良いですね。
先方も回答を考える時間ができますし、補足の資料などを送ってくれることもありますよ。

ドローン業界の取材ならではの留意点は?

ドローン業界の取材では、技術面と法規制の両方について理解しておくことが重要です。
技術的な進歩が業界の進化に大きな影響を及ぼすのと同じように、法規制もドローンの活用範囲を制約する要素のひとつ。

ドローン業界にいる人々は、「こういう性能があれば、もっと有効活用できるのに!」とか、「ドローンをもっと活用したいけれど、法による制約があって難しい」といった葛藤を抱えています。
そこに対する理解のある・なしは、インタビュイーの本音や深い洞察を引き出すために不可欠と言える要素かもしれません。

また、ドローン業界は日進月歩の世界ですから、最新の技術やトレンド、ドローンテクノロジーの社会的・倫理的な影響などについても情報収集をしておきましょう。

楽しくリラックスした取材にするコツは?

すべての対人取材に言えることですが、インタビューの質を高めるためには「リラックスすること」が重要になります。
リラックスした雰囲気の中で行われる取材では、より深い洞察や思いがけない情報を引き出すことができるのです。

相手にリラックスしてもらうためのコツは、まず自分がリラックスすること。
フランクすぎる話し方をしたり、失礼な態度を取ったりするのはNGですが、気持ちにゆとりを持って接することで、それが相手にも伝わって対話がスムーズになるでしょう。

ドローン系の取材では、専門知識や技術的な話題が多くなりがちなので、インタビュアーとしては緊張を伴うと思いますが、「わからないことは教えてもらおう!」くらいの気持ちで臨んだほうが、うまくいくかもしれませんよ!

ドローン系の取材で役立つ質問例

ここでは、ドローン系の取材をするときに、ぜひヒアリングしてみたい質問や、原稿作成に役立つ質問の例をご紹介します。

スクールや企業のアピールポイント

ドローンスクールやドローン関連企業の取材では、事前調査で基本情報をリサーチしていると思いますので、インタビューの現場ではアピールポイントを尋ねてみましょう。

ドローンの活用ニーズが高まると同時に、スクールや関連企業も増えてきているので、これからはドローン業界内における「差別化」が重要になってきます。
スクールや企業としては、今後のためにもしっかりPRしておきたい内容なので、記事の中で紹介すると喜ばれますよ。

活用事例(スクールの場合は講習内容)の詳細

記事の冒頭で紹介したように、ドローンの活用は幅広い分野に及んでいます。
テクノロジーの進歩や法整備が進んでくると、さらに新しい分野でも活用が始まると考えられますし、既存分野での活用もどんどんグレードアップしていくでしょう。
モデルとなる事例や最新情報を業界全体で共有することで、そのスピードは加速していくはずです。

また、2023年6月にドローンの操縦ライセンス制度(国家資格)が始まったことから、スクールの役割も重要になっています。
学べる内容、取得できる資格などは、記事内で詳しく紹介できるようにしましょう。

ドローン業界の課題と対策

ドローン業界には、法規制の問題、技術的な問題、一般の人々の理解促進、社会的・倫理的な影響など、さまざまな課題が存在しています。

業界に携わる人々にとっては、多かれ少なかれ直面せざるを得ない問題であり、どのように突破口を見出すか苦心されている方は非常に多いです。
課題に対してどのように向き合い、対策をしているのかを取材記事で紹介することは、先人の知見やノウハウを広く共有するチャンスになるでしょう。

安全管理のための施策

無人で飛行するドローンは、安全面の対策が欠かせません。
もちろん、パイロットをはじめとした業界の方々は、安全な運航ができるように細心の注意を払っているのですが、一般の人々からすると「怖い」「危ない」というイメージが根強いですよね。

ドローンの安全管理に関する内容は、一般の読者にとっては安心材料になりますし、ドローン業界全体にとっては活用拡大のための重要な一手となります

今後の展望

ドローンスクールやドローン関連企業としてのビジョン、パイロット個人の目標はもちろん、ドローン業界全体の発展についてもヒアリングすると良いですね。

ドローン業界は期待度が非常に高い業界で、技術の進歩もめざましいため、数年後には大きな変化を遂げている可能性があります。
そのために乗り越えなければならない課題なども一緒に尋ねてみることで、より深い洞察が得られるでしょう。

ドローン系でおすすめの取材記事

最後に、ドローン系でおすすめの取材記事をご紹介します。
目的や方向性の異なる5記事をピックアップしましたので、参考にしてみてくださいね。

福島ロボットテストフィールド 副所長・若井さんのインタビュー記事

記事タイトル:福島ロボットテストフィールド|「実運用さながら」が叶う場所であり続けるために進化する実証フィールド

東日本大震災の復興プロジェクトで開所された「福島ロボットテストフィールド(RTF)」。ドローン業界の発展を支える「実証フィールド」の全貌が、画像付きで詳細に明かされている。【DRONE NAVIGATOR(ドローンナビゲーター)】掲載。

一畑ドローンスクール 代表・高井さん、外部講師・杉谷さん、講師・坂本さんのインタビュー記事

記事タイトル:一畑ドローンスクール|建設会社が運営!飛行経験豊富な講師の指導で知識・スキルが身につく

島根県松江市にある建築会社・一畑工業株式会社が運営する「一畑ドローンスクール」の記事。代表、外部講師、講師の3名が、スクールの特徴やこだわりを紹介している。写真の効果的な使い方と親しみやすい文章も魅力。【コエテコドローン】掲載。

ドローングラファー 林 成樹さんのインタビュー記事

記事タイトル:凄腕より被写体の魅力を優先 趣味からアフロ契約作家へ

会社員時代を終えた後、本格的にドローンパイロット・フォトグラファーになった林さん。そのストーリーやドローングラファーとしてのこだわり等が、たっぷりと語られている。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)Webサイト掲載。

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 城 純子さんのインタビュー記事

記事タイトル:「ドローン活用を地域に根付かせる」広島県神石高原町ドローンコンソーシアムの挑戦

ドローン関連企業や防災専門機関、有名大学の研究所など7社が参画して取り組む「広島県神石高原町ドローンコンソーシアム」。一大プロジェクトのグランドデザインを担当した城さんが、その全容を語る。【TOMORUBA】掲載。

焼津市防災航空隊ブルーシーガルズ所属 島澤 佑介さんのインタビュー記事

記事タイトル:自治体内の部署を超えて航空隊を組織 焼津市防災航空隊『ブルーシーガルズ』

消防・防災分野におけるドローン活用の先駆者的自治体の静岡県焼津市。記事では2016年に結成した防災航空隊「ブルーシーガルズ」の活動等を紹介。一般社団法人 救急医療・災害対応無人機等自動支援システム活用推進協議会(EDAC)Webサイト掲載。※会員登録で全文閲覧可能

まとめ

ドローン業界は、今後ますますの発展が期待されている分野であり、ドローンの進歩によって解決される課題も多いと見込まれています。
その一方で、技術面や運用面での課題がまだまだ多いことも事実。
だからこそ、ドローン関連の取材記事が担う役割は大きいと言えるでしょう。

この記事では、専門的なこと・技術的なことに精通していなくても、円滑に取材を進めるためのヒントをご紹介しました。
ぜひ有意義なインタビューを行って、業界の発展に寄与していきたいですね!