ホテルや旅館への宿泊は、観光と並ぶ「旅の楽しみ」のひとつ。
「魅力的なホテル・旅館の情報が知りたい!」というニーズが非常に高いため、あらゆるメディアにおいて取材の機会が多い分野です。
そこで、今回の記事では「ホテルや旅館の取材」をテーマに、押さえるべきポイントやコツを解説していきます。
お宿の魅力を余すところなく伝え、読者を惹きつける記事を書くために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
【こんな方におすすめ!】
- はじめてのホテル・旅館取材で、基本的なノウハウが知りたい!
- 魅力的な記事を書くためには、インタビューでどんなことを聞けばいいの?
- 文字数や画像枚数が限定されている中で、フォーカスする内容を決めかねている
ホテル・旅館の取材・記事作成の目的とは?
ホテルや旅館に関する取材記事の目的は、主に以下の3種があります。
◆ホテル・旅館の設備や接遇に関する魅力のPR(顧客向け)
◆ホテル・旅館の経営戦略や成功事例の発信(経営者や同業者向け)
◆宿泊業界の仕事や業界についての情報発信
◆幅広い読者の興味関心を引くストーリー・ドキュメンタリーとして
まずは、それぞれについて詳しく解説していきたいと思います。
目的1)ホテル・旅館の魅力をPRする
ホテル・旅館取材の主要な目的のひとつは、その設備や接遇(おもてなし)についての魅力を顧客向けにPRすることです。
客室や大浴場(スパ)のデザイン、アメニティ、レストランのメニューやサービス等を詳細に取材することで、ホテルや旅館の魅力が伝わる記事が書けます。
また、スタッフのプロフェッショナリズムや心遣い、ホテル・旅館が提供している独自のサービスや体験なども強調することができるでしょう。
これらの情報は、顧客が旅行や出張で滞在先を選ぶときに重要な情報となります。
取材によって具体的で鮮やかな記事描写が可能となり、多くの人々にホテル・旅館の価値が伝わって、「この場所を訪れたい!」と感じてもらえるはずです。
目的2)経営戦略や成功事例の発信
ホテル・旅館の取材には、経営戦略や成功事例の発信という目的もあります。
宿泊業は、競争が非常に激しいビジネスフィールドのひとつ。
その中で成功を納めているホテルや旅館が採用しているビジネス戦略や、日々の業務の中で実践している施策などは、大変有益な情報なのです。
成功事例の取材を通じて、ホテルや旅館がどのように顧客のニーズを満たし、差別化を図り、持続的なビジネスを展開しているのかを詳しく知ることができます。
これらの情報は、他のホテル・旅館が自身のビジネスモデルを改善したり、新しい戦略を考案したりする際に役立つほか、他業種の経営者にとっても学ぶべき点が多いため、ビジネス誌などにホテル・旅館の取材記事が載ることも珍しくありません。
目的3)宿泊業界の仕事や業界についての情報発信
ホテル・旅館の取材記事は、宿泊業界の仕事や業界に関する情報発信の手段としても役立ちます。
宿泊ビジネスの運営方法、顧客サービス、業界のトレンド、現場で働くスタッフの日々の経験や挑戦などが、取材によって紐解かれるのです。
これらの情報は、宿泊業界に興味のある一般読者から、同業で働くプロフェッショナルたち、さらに今後この仕事に就きたいと考えている学生にとっても有益です。
現に、ホテルや旅館のHP、宿泊業に特化した専門学校や学部・学科のHP、就職情報サイトなどには、現場で活躍する「先輩の声」「卒業生の声」という形で取材記事が掲載されていますよね。
ホテル・旅館の取材記事は、業界内外の人々の興味関心を深めるほか、教育的な役割も担っていると言えるでしょう。
目的4)ストーリーやドキュメンタリーとして
ホテル・旅館の取材記事は、ストーリーやドキュメンタリー、いわゆる「読みもの」としても、読者の興味関心を引くことができます。
テレビドラマや小説、漫画などで、ホテルや旅館を舞台にした作品は多いですよね。
人々が集まるホテルや旅館は、日々たくさんの物語が生まれる場所。
高級な設備や美食、贅沢なスパ体験などの具体的なサービスだけではなく、その背後にあるビジョンや哲学、地元との関わり方などの物語性に、読者は強く惹かれるのです。
たとえば、旅情報サイトや地域の情報誌・サイトなどに、ひとつの読みものとしてホテル・旅館の取材記事を載せているケースが少なからず見られます。
インタビューをもとに一人称や三人称で語られるストーリーは、幅広い読者を魅了するでしょう。
ホテル・旅館取材のコツ~①事前準備編~
ここからは、ホテル・旅館に取材をする際のポイントやコツを実践的に解説していきます。
まずは、対人取材で必須のタスクとなる「事前準備」から。
ホテル・旅館の取材で留意するべきポイントや、取材前に必ず行っておきたいリサーチ内容などを、しっかりと理解しておきましょう。
記事の目的・方向性を把握する
ホテル・旅館に関する情報は多くの人々からニーズがあり、取材記事の方向性は掲載する媒体や特集の内容によって多種多様です。
そのため、取材をするにあたっては、まず「誰に、どんな情報を届けたいのか」を正確に把握し、目的に基づいた方向性を定めることが大前提となります。
極端に言うと、顧客向けの記事なのに「経営戦略の話ばかりで、設備やサービスの紹介がない」という状態では、肝心の集客につなげることは期待できませんよね。
取材の目的が明確になってこそ、取材でヒアリングするべき情報は何なのか、どのような視点からホテル・旅館を描くべきなのかを、はじめて決定できるのです。
事前に質問を考えてリストを作る<
記事の目的や方向性が明確になったら、あらかじめ「取材で必ずヒアリングしたい質問」を考えて、リストにしておきましょう。
質問リストの作成は、インタビューの質と効率を大幅にUPするために有効な手段です。
作成する過程で、インタビューを通して得たい情報のピックアップ&ブラッシュアップや、思考の整理ができるので、インタビュー中に心の余裕が生まれます。
取材当日もリストが手元にあれば、必要な情報を聞き忘れるリスクも減らせるはずです。
また、取材依頼書と簡単な質問リストを先方に事前共有しておくパターンもあります。
そうすることで、インタビュイーも取材の目的を理解したり、回答を準備したりする時間が確保できるので、当日の取材がよりスムーズになるでしょう。
ホテル・旅館や業界についてのリサーチをする
取材対象や業界に関するリサーチも、取材の事前準備には欠かせないタスクです。
まず、どのような方向性の記事であっても、インタビュイーが勤めているホテル・旅館の基本情報(施設やサービスについて)は、必ずリサーチしておきましょう。
過去の取材記事や特集記事で紹介されている内容や、実際に宿泊したユーザーの口コミ情報なども要チェック。
インタビューの主訴となる部分についてはもちろん、直接的に関わりのない情報であっても軽くリサーチしておくと、取材中に会話を膨らませたいときに役立ちます。
ホテルや旅館は、地元の文化や歴史、価値観を大事にしていることも多いので、その場所の地理的・歴史的バックグラウンドも知っておくと◎ですよ!
ホテル・旅館取材のコツ~②インタビュー編~
次に、インタビューの現場における、ホテル・旅館取材のコツを解説します。
取材中に焦ったり、相手に不快な思いをさせたり、気まずい雰囲気になったりしないためには、インタビュー当日の心構えも大切です。
ホテル・旅館ならではの留意点やポイントにも着目していますので、ぜひ参考にしてみてください。
言葉遣いやマナーに気をつける
ホテル・旅館取材のインタビュイーは、支配人や女将、ベルボーイやドアマン、仲居さんなど、「接遇のプロフェッショナル」たち。
彼らは日々たくさんのお客様に接しながら、美しい立ち居振る舞いや言葉遣いなどを徹底的に身につけています。
同等に振る舞おうとしてガチガチになってしまうのは良くありませんが、インタビュアー側も通常以上に言葉遣いやマナーを意識するに越したことはないでしょう。
特に、ホテル・旅館の館内でインタビューや撮影をするときは注意が必要です。
同じ場所にお客様がいるので、ホテル・旅館の雰囲気を壊すような行動は絶対にNGですし、体験レポートを含む取材においても、はしゃぎすぎは禁物。
インタビュアーもまた「プロ」としての振る舞いを忘れないようにしてくださいね。
インタビュイーの意見を尊重する
ホテル・旅館の運営者やスタッフは、その施設や業界についての深い知識に加えて、独自の見解や価値観も大切にしているものです。
そのため、事前のリサーチを通して一般的な情報や見解を知っていたとしても、取材はあくまで相手の意見を尊重しながら進めなければなりません。
そもそもインタビューとは「取材相手の話を聞くこと」が目的なのですが、実生活で触れる機会やメディア等で紹介される機会が多い業界の取材になると、つい自分の意見や知識を持ち出したくなるインタビュアーが多いのです。
ホテル・旅館などの宿泊業界は、まさに上記に該当するため、自分が「聞き手」であることを、いつも以上に意識して臨みましょう。
情報過多にならないように注意する
ホテル・旅館は、読者に伝えたい魅力的な事柄が満載の場所。
そのため、インタビュアーはつい「あれも聞きたい、これも聞きたい」という気持ちになってしまいますよね。
質問リストを軸に深掘りする中で、自然と話題が膨らんでいくのは、もちろんOK。
しかし、限られた時間の中で取材を行うからには、やはり上手に取捨選択しながらヒアリングしていく必要があります。
記事の参考になりそうな情報が多く、どこにフォーカスするべきか迷ったときは、インタビュイーに判断を委ねるのも良い方法です。
「特にアピールしたい内容は何ですか?」と直接尋ねてみる、ある程度自由に話してもらう中で話題の中心になった事柄に着目するなど、柔軟に工夫してみてくださいね。
ホテル・旅館取材のおすすめ質問例
ここからは、ホテル・旅館の取材でヒアリングしたい質問の例をいくつかご紹介します。
ホテル・旅館の設備やサービスを紹介する記事、スタッフ個人が主役の記事、宿泊業の仕事にスポットを当てる記事など、記事の目的はさまざまなので、案件に合わせてお役立てください。
ホテル・旅館でイチオシの設備やサービス
集客を目的としてホテル・旅館を紹介する記事では、必ずヒアリングしておきたい質問です。
ホテルや旅館の多くは、独自の特徴やアピールポイントを作って、競争の激しい宿泊業界で勝ち残ろうとしています。
イチオシの設備やサービスをヒアリングして記事にすると、読者はホテル・旅館の価値やユニークな体験を詳細に知ることができるのです。
ホテル・旅館にとっては良いPRになり、将来的にその施設を訪れる読者にとっても有益な情報となるでしょう。
印象に残っているエピソード
ホテルや旅館は、たくさんの人々が訪れ、さまざまなドラマが生まれる場所です。
そこで働くスタッフたちのエピソードの中には、感動的なストーリーも多々あり、読者の興味を引き付けるでしょう。
具体的なエピソードを紹介することで、ホテルや旅館で体験できる内容を読者がイメージしやすくなりますよ。
インタビュイーの人間性や情熱が間接的に伝わる質問でもあるため、質問リストに入っていなくても、合間に少しヒアリングしてみると良いかもしれません。
地元のコミュニティとの関わり方
ホテルや旅館は、その施設がある土地の文化や価値観を大切にしていることが多いです。
中には、地元のコミュニティと極めて良好な関係性を築き、お互いに高めあっているケースも見られます。
ホテル・旅館の館内で地域の伝統芸能を披露している、地元の民芸品を販売しているなどの情報が事前調査でわかった場合は、ぜひ取材で詳しくヒアリングしてみてください。
ホテル・旅館や地域全体のPRにもなりますし、宿泊先を探している読者にとっても魅力的な情報になるはずです。
過去に経験した困難と乗り越え方
ホテル・旅館の経営者やスタッフたちが、過去にどのような課題に直面し、それをどう解決してきたのかを尋ねる質問です。
その経験が現在の運営やサービスにどのように反映されているのかも、あわせてヒアリングすると良いですね。
顧客層の読者に対しては、ホテル・旅館の課題解決に対する姿勢が伝わりますし、同業者や他業種の経営者にとっては、貴重な学びの機会になります。
進学系やリクルート系の記事でも、読者が現場の仕事に対する理解を深めることができるでしょう。
今後の計画や目標
ホテル・旅館が持っているビジョン、将来どのような成長や進化を目指しているのかを理解するために役立つ質問です。
読者は今後提供される予定のサービスや体験を知って旅の計画に役立てることができますし、ホテル・旅館としては施設の革新性をアピールできるでしょう。
また、進学系やリクルート系、そのほかホテル・旅館のスタッフ個人にスポットを当てる記事においても、記事の締めの部分に使いやすい質問なので、ぜひヒアリングしておくことをおすすめします。
ホテル・旅館のインタビュー記事の例
現在インターネット上に公開されているホテル・旅館関連の取材記事の中で、おすすめの記事を5つご紹介します。
「ウェスティンホテル東京」ホテリエ・総支配人のインタビュー
記事タイトル:恵比寿の人気ラグジュアリーホテル「ウェスティンホテル東京」のホテリエを徹底取材
インタビュイーは2人のホテリエと総支配人。【OZmall】掲載。ホテルスタッフの目線から語られる「ウェスティンホテル東京」の魅力と独自性、設備やサービスの紹介に加え、ホテリエの仕事と育児の両立など興味深い内容も。
「アパホテル」代表・元谷外志雄氏のインタビュー
記事タイトル:【ホテル経営者必読インタビュー】アパホテル代表 元谷外志雄氏が語る、コロナ禍でも揺るがないアパホテルの成り立ちやホテル経営における勝ちパターンとは?
コロナ禍の真っ只中にあった2020年10月、ホテル業界の情報メディア【HOTELIER(ホテリエ)】に掲載された記事。アパホテルの経営戦略や業界全体の未来について、代表の元谷氏が飾らない言葉で鋭く洞察している。
「大阪空港ホテル」先輩インタビュー
記事タイトル:「また利用したい」ホテルをスタッフみんなで作っています
「大阪空港ホテル」のHPに掲載されている先輩インタビュー。フロントクラークの仕事内容、スタッフ同士のチームワーク、仕事のやりがい、1日のタイムテーブルなど、ホテルの仕事に憧れる学生にとって貴重な情報が満載!
「浜の雅亭一井」ゲストサービス部マネージャー・谷口宏明氏のインタビュー
記事タイトル:STAFFインタビュー 宿泊業の理想的な働き方
「浜の雅亭一井」(三重県)を運営する株式会社一井の記事。国内最大のシゴトのSNS【Wantedly】掲載。谷口氏のバックグラウンドや、ホテル業界の働き方、事業再生や地方創生の醍醐味など、幅広い読者層に刺さる内容。
草津温泉「奈良屋」支配人・佐伯達也氏のインタビュー
記事タイトル:草津温泉に佇む老舗旅館「奈良屋」に聞く、あなたの知らない「湯守」の世界
創業145年以上を誇る老舗旅館へのインタビュー記事。【一休コンシェルジュ】掲載。日本で有数の温泉地・草津や旅館の魅力に加えて、「湯守」という仕事にスポットを当てることで、読者の興味を一層引き付けている。
まとめ
ホテル・旅館の取材記事は、幅広い読者からのニーズがあり、掲載媒体や記事の目的も多様なので、まず方向性を定めてから取材に臨むことが重要になります。
記事の目的に合った事前準備を行ったうえで、インタビュー当日はホテル・旅館ならではのマナーや留意点に配慮しながら、効率的かつ円滑に取材を進めていきましょう。