葬儀・葬祭系の取材はどう進める?事前調査やインタビューのポイントを解説!

葬儀・葬祭は、人の生涯を締めくくる厳かな儀式です。
古今東西のあらゆる文化や宗教で重んじられている儀式であり、葬儀・葬祭に対する報道には大きな社会的意義や責任が伴います。

そこで今回の記事では、葬儀・葬祭系の取材をするときに押さえておきたいポイントや、配慮すべき事柄などについて、詳しく解説していきたいと思います。

【こんな方におすすめ!】

  • 葬儀・葬祭系の取材で気をつけるべきポイントを知りたい方。
  • デリケートな分野なので、どこまで深掘りして良いか悩んでいる方。
  • 質の良いインタビューをして、取材対象者にも読者にも喜ばれる記事を書きたい方

葬儀・葬祭の意義とは?

葬儀・葬祭に関わる仕事は、非常にデリケートな分野です。
この仕事を選び携わっている人々は、故人や遺族にとって葬儀・葬祭が持つ意味と重要性を常に念頭に置きながら、真心をこめて日々の業務にあたっています。

取材をする際には、そのマインドを理解することが大前提となるため、まずは葬儀・葬祭の意義・目的を整理していきましょう。

意義・目的1)故人への最後の敬意と感謝を示す

葬儀・葬祭は、故人がこの世を去った後に最後の別れと敬意を表す場です。
遺族や友人、同僚などの関係者が、故人の功績や人間性に対して、思慕と感謝の気持ちを込めて追悼し、惜しみながら故人を送り出します。

葬儀・葬祭を通じて、故人が周囲の人々に愛され尊敬されていたことを、参列者同士が認識して共有することもできるでしょう。
突然の別れであった場合はもちろん、それ以外でもさまざまな理由から「生前に感謝の気持ちを伝えられなかった」という遺族や関係者は少なくありません。
葬儀・葬祭への参列と追悼は、故人に対する心残りがある方々にとっても、大変貴重な機会になるはずです。

意義・目的2)遺族や関係者のグリーフケア

葬儀・葬祭は、大切な人を失った喪失感や悲しみの癒やしを図る場でもあります。
参列者同士が共感し悲しみを分かち合うことで、心の癒やしと慰めを得られることがあるため、遺族や関係者のグリーフケアという観点からも重要視されているのです。

参列者たちが故人の生涯を振り返り共に悼むことで、互いに支え合い悲しみを共有する機会となります。
また、葬儀・葬祭という儀式を経ることは、遺された人々が少しずつ心の整理をして、故人の死を受け入れるプロセスを助けてくれるでしょう。

亡くなって間もない頃は悲しみに包まれていても、「きちんとした儀式をして故人を見送ることができた」という経験には、とても大きな意義があるのです。

意義・目的3)家族・親族や関係者の結束を促す

葬儀・葬祭では、家族や親族、友人、同僚などが一堂に介し、互いに悲しみを分かち合うことで、絆が生まれる・絆を再認識できることがあります。

特に親族に関しては、近くに住んでいて頻繁な交流がない限り、「何年も会っていない」というケースも少なくないですよね。
また、「よく話は聞いていたけど、故人の友人や知人と顔を合わせたことがない」というケースも多いと思います。
葬儀・葬祭は、そういう間柄の人同士が顔を合わせ、言葉を交わせる貴重な機会です。

その後の関係性がどうなるのかはケースバイケースですが、たとえ頻繁な交流が続かなかったとしても、「葬儀に参列してくれた」「葬儀で悲しみを分かち合った」という記憶は、いつまでも遺族の心に残り続けるでしょう。

意義・目的4)死生観や、文化・宗教と向き合う

葬儀・葬祭は、「死」と向き合う貴重な機会です。
死や人生の終末に関することは、日常の中ではタブー視されているような部分もありますが、生きている限り避けては通れないもの。
いつか必ず訪れる「死」と向き合うことは、生きていることの大切さを認識したり、自身が亡き後の遺族を思いやったりという観点からも、とても重要な意味を持ちます

また、葬儀・葬祭の儀式は地域や民族によって異なる慣習があり、「文化や宗教の継承」という意味でも重要な役割があります。
遺族にとっては自身の家系で継承されてきたものを認識する機会になり、遺族以外の参列者にとっては異なる文化や風習に触れる貴重な機会にもなるのです。

葬儀・葬祭系取材のコツ~①事前準備編~

それでは、葬儀・葬祭系の取材のコツを具体的に解説していきます。
まずは、対人取材の基本となる「事前準備」から。
しっかりと事前準備を行ってこそ、インタビュー当日の効率UPや深い洞察につながるので、ポイントを押さえたリサーチを実施しましょう!

業界の基礎知識やトレンド、課題を把握する

あらゆる対人取材に言えることですが、取材対象の業界に関する基本的な知識や、最新のトレンド、抱えている課題などは、取材前にリサーチしておきましょう。

一から説明してもらうよりも時間を省くことができますし、記事の方向性や質問内容を決めるためには、リサーチが欠かせないからです。
また、しっかりと準備をしたうえで取材に臨むと、こちらの真摯な姿勢が伝わり、取材相手からの信頼獲得にもつながります

葬儀・葬祭は宗教や宗派などによっても異なる部分が多く、非常に奥が深い世界なのですが、専門知識を過剰に詰め込む必要はありません
葬儀・葬祭の基本的な流れ、最近話題になっていること、課題視されていること等を、ざっと把握しておきましょう。

インタビュイーの専門性や企業についてリサーチする

葬儀・葬祭に関わる仕事には、さまざまな種類があります。
主な職業についてまとめてみましたので、それぞれの概要を把握し、インタビュイーが携わっている職種については、さらに詳しくリサーチしておきましょう。

また、葬儀社やセレモニーホールの取材をする場合は、その企業の理念や経営方針についてもHPなどで予習しておくと安心です。

職種仕事内容
葬儀ディレクター葬儀の企画や運営を担当。遺族とコミュニケーションを取りながら葬儀の進行を指揮したり、葬儀に関連する手続きをサポートしたりする。
葬儀司会者    葬儀の司会進行を担当する。葬儀ディレクターが兼ねる場合もある。
葬儀社のスタッフ葬儀場の準備、遺体の管理、葬儀参列者の案内やサポートなど、葬儀の実施に関わるさまざまな業務を担当する。
神職・僧侶・牧師など宗教的な儀式を執り行う。宗教的な指導や祈祷を行い、個人の霊を安らかに導く。民間宗教や民族的な葬祭では「葬祭司」がこの役割を担う。
葬儀装飾家花や装飾品を使用して、葬儀会場や施設の装飾を手がける専門家。
葬儀音楽家葬儀における音楽を担当。演奏や歌唱を行う場合もある。故人や遺族のリクエストに応じた音楽を提供する。
葬儀カメラマン葬儀の模様を撮影・記録して、写真や映像として残す役割を担う。撮影のほか、編集まで担当する場合もある。

リサーチした内容をもとに質問リストを作成する

記事の要となる質問をピックアップしてリスト化しておくと、インタビューの現場で非常に役立ちます。

どんなに準備を徹底していても、インタビューは生モノですから、当日はどう流れるかわかりません。
そんなときに質問リストがあると、効率よく取材を進めてヒアリング漏れも防ぐことができます
リサーチした内容と記事の目的・方向性を照らし合わせて、記事化の際に役立ちそうな質問を考えてみましょう。

もうひとつコツを挙げるとすれば、深掘りの質問や余談から広がるトークの余白を残すために、あらかじめ準備する質問は多くなりすぎないようにしてくださいね。
可能であれば、できあがった質問リストを事前に先方にも共有しておくことで、インタビュイーが回答を整理する時間ができるので、さらに効率UPが図れます。

葬儀・葬祭系取材のコツ~②インタビュー編~

次に、実際のインタビュー現場で押さえておきたいポイントの解説です。
特に重要と思われるポイントを3つピックアップしましたので、ぜひ参考にしてください。

葬儀・葬祭の仕事に対する敬意と配慮を忘れない

葬儀・葬祭は、故人や遺族にとって、非常に感情的でプライベートな儀式です。
ここに携わるプロフェッショナルたちは、常にその緊張感を持ちながら、マニュアルだけではできないような対応をしています。

葬儀・葬祭は深い悲しみに満ちた儀式であると同時に、故人にとっても遺族にとっても重要なものであることを誰よりも認識して、この仕事を選んで従事している人たちなのです。
だからこそ、インタビューを行う際には、最大限の敬意をもって接することが重要だと言えます。

インタビュイーをはじめとしたスタッフの心情に対してはもちろん、その場にいない遺族や関係者の感情も理解し尊重することが大切です。
相手が話しにくそうな様子なのに無理に取材を進めたり、プライバシーを侵害する質問をしたりするのは避けましょう。

倫理とルールを遵守する

取材に際しては、ジャーナリストとしての倫理やルールを遵守することが大切です。
情報の正確性を重視して虚偽の情報を提供しないように心がけることはもちろん、撮影や録音を行う際に関係者の許可を得ることや、場合によっては非公開という選択を尊重するべきケースも多々あるでしょう。

上記はすべての取材に共通することなのですが、特に葬儀・葬祭の業界はデリケートな分野なので、いつも以上に意識しておくことをおすすめします
葬儀社やセレモニーホールに赴いて取材を行うときは、たとえお通夜や葬儀が行われていなかったとしても、音漏れのリスクがない個室であったとしても、厳かな雰囲気を壊すような振る舞いはNGです。

リラックスできる雰囲気を作る

葬儀・葬祭の仕事に携わっている人々は、遺族や関係者に対する配慮が行き届いているプロフェッショナルです。
常日頃からデリケートな現場で仕事をしているので、ご本人が意識していなくても、マナーの徹底や緊張感をもって相手に接することが染み付いている場合があります。

当たり前のことではありますが、人は緊張している状態よりもリラックスした状態のほうが、心を開いて本当の気持ちを話すことができますし、会話も弾みます。
葬儀・葬祭系の取材では、インタビュアーからの働きかけで相手の緊張をほぐし、自然体で話せるようにアシストすることを心がけましょう。

葬儀・葬祭系の取材で役立つ質問例

ここでは、葬儀・葬祭系の取材で役に立つ質問の例をいくつかご紹介します。

この業界を目指した理由・きっかけ

進学系やリクルート系の記事では鉄板の質問ですね。
葬儀社やセレモニーホールの紹介記事でも、中で働いている人たちのバックグラウンドやマインドを紹介することで、イメージアップや利用者の安心感につながります。

葬儀・葬祭の仕事が社会的に大変重要な職業であることは言わずもがなですが、生半可な気持ちで従事できる仕事ではありません。
実際に葬儀・葬祭業界で働いている人々の動機は、読者に大きな気づきを与えるでしょう。

仕事をするときに一番大切にしていること

葬儀・葬祭は、非常に感情的でデリケートなシーンです。
この業界で働く人々は、大切な人を失った喪失感と悲しみでいっぱいの遺族や参列者に対して、さまざまな配慮をしています。

徹底したマニュアルはもちろん、故人や遺族への尊重と心遣いがなければ、成り立たない仕事です。
その根底にあるマインドを紹介することで、葬儀・葬祭の業界で働く人々に対する理解がより深まりますよ。

葬儀・葬祭の準備や進行について

顧客層に向けた記事では、実際の葬儀・葬祭がどのような流れで進むのかを知りたい読者は多いので、簡潔にでも記事内で紹介すると喜ばれる内容です。
葬儀・葬祭への出席経験が少ない場合は、マナーや決まりごとに不安を感じることもあるので、「プロがアドバイスする葬儀・葬祭のマナー」などの特集を組むのも良さそうですね。

また、進学・リクルート系の記事では、葬儀・葬祭に関わる仕事のリアルを紹介することで、この道を目指す学生の皆さんが参考にできるでしょう。

業界が抱えている課題と対応策

葬儀・葬祭の業界には、さまざまな課題もあります。

たとえば、費用の高騰による経済的な負担、宗教や風習の違いによる多様なニーズへの対応、人手不足、専門的なスキルの維持などです。
一般的にはあまり知られていませんが、墓地のスペースや化学物質の使用といった環境への影響も、この分野が抱えている課題のひとつ。

読者層は多少選びますが、このような課題に対する現場の人々の向き合い方は、大きな学びになるはずです。

今後の展望や目標

どのような類の記事でも鉄板であり、記事の締めくくりに使いやすい質問です。

取材対象が個人の場合は、スキルアップ・キャリアアップに関することや、今後どのように遺族や関係者と接していきたいかなどをヒアリングすると良いでしょう。
葬儀社やセレモニーホールが取材対象である場合は、企業として目指すところや目標などを尋ねてみると良いですね。

参考になる葬儀・葬祭系インタビュー記事の例

最後に、現在インターネット上に公開されている葬儀・葬祭系のインタビュー記事の中から、参考になりそうな記事をピックアップしてみました。

セレモニー狭山ヶ丘ホール 葬祭ディレクター・戸田 琴音さんのインタビュー記事

記事タイトル:理想をカタチに。目標に向かって日々邁進。

埼玉県で冠婚葬祭業務を展開する株式会社セレモニー。同社Webサイトの採用情報ページに掲載された戸田さんのインタビュー記事では、仕事のやりがいや1日のスケジュールなどがシンプルな記事構成でまとめられている。親しみやすい語り口も魅力。

日本典礼 西新井会館 館長・鈴木 伴秀さんのインタビュー記事

記事タイトル:(日本典礼)「偲ぶ心をかたちにする」の理念を胸に、悔いのないお別れをサポート

「よりそうお葬式」Webサイト掲載の葬儀社インタビュー。設備の紹介、葬儀社として大切にしている理念のほか、打ち合わせの進め方、ご遺族との接し方など具体的な内容も詳細に語られている。充実した情報量で鈴木さんの温かいお人柄がよく伝わる記事。

ライフサービス株式会社 社長・原口 茂和さんのインタビュー記事

記事タイトル:業界の発想にないことを実践し、さらなる成長を~ライフサービス(株)~

葬祭業界特化型の経営者インタビュー・転職プラットフォーム【Mission Company Story ~エンディングビジネス~】に掲載。静岡県牧之原市を拠点に複数の葬儀式場を展開するライフサービス(株)の原口社長が、自身のバックグラウンドや経営戦略、ビジョンを語る!

イズモ株式会社 葬祭部 納棺事業所 所長・小原 こずえさんのインタビュー記事

ページタイトル:葬祭業界で働く方々のインタビュー パルモグループ イズモ株式会社のインタビュー

葬祭業界専門の求人・転職サイト【葬祭ジョブ】に掲載。調理師から納棺士にキャリアチェンジした小原さんが、納棺士を目指したきっかけ、心に残るエピソードや仕事のやりがい、仕事の流れや働き方、家庭との両立の仕方など、幅広い質問に答えている。

有限会社えびの公善社 事業承継の成功事例インタビュー記事

記事タイトル:【成功事例インタビュー】諦めかけた葬儀屋の仕事。長崎から宮崎に移住し、事業承継候補者に

事業承継の想いとカタチを発信するWebマガジン【rekay Magazine】に掲載。インタビュイーは、松井昇さん(譲渡者)と和田敏也さん(承継者)の2名。後継者不足に悩む個人経営の葬儀社や、葬儀の仕事で独立したい方には必読の記事!

まとめ

葬儀・葬祭系の取材記事は、進学系・リクルート系や、葬儀社のPR、経営者インタビューやM&A(事業継承)の事例紹介など、多岐にわたっていました。

しかし、どのような方向性の記事を手がけるにしても、もっとも大切になるのは「葬儀・葬祭の意義や目的を理解すること」「その仕事に従事する人々に対するリスペクトを忘れないこと」に尽きるような気がします。
デリケートな分野なので身構えてしまうかもしれませんが、上記のようなマインドさえ持っていれば、大きく外してしまうことはないでしょう。

葬儀・葬祭の関係者が日々実践しているように、真心と思いやりのあるインタビューを心がけて、素敵な記事を書いてくださいね。