ペット業界は、取材ニーズが高い業界のひとつ。
ペット産業に携わるプロフェッショナルたちのバックグラウンドや、日々直面している課題、その情熱やマインドを引き出して、インタビュイーと読み手の双方にとって有意義な記事になるようなインタビューにすることが大切です。
この記事では、ペット関連の職業の方々に取材するときのヒントを解説していきます。
ペット関連の取材を控えているライターや編集者の方は、ぜひ参考にしてみてください!
【こんな方におすすめ!】
- はじめてペット業界の取材オファーを受けた方。
- ペット系の取材をするときのコツやポイント、リサーチするべき内容を知りたい方。
- 質の良い取材をして、インタビュアーや読者、業界全体にも役立つ記事を書きたい方。
ペット業界の取材ニーズが高い理由
ペット関連の取材記事は、インターネットで少し検索するだけでも多様な記事がHITして、他の業界と比べても数が多い印象を受けます。
適切な取材をして読者に刺さる記事を書くためには、「読者のニーズや記事の目的を理解すること」が大切なので、まずはペット業界の取材ニーズが高い理由を考えていきましょう。
ペットに興味を持つ人が多いから
飼い主にとって、かわいいペットは大切な家族の一員。
ペットにとって良いことや、ペットとの暮らしに役立つ情報を、少しでもたくさん知りたいと考えています。
事情があってペットを飼うことはできないけれど、「いつか飼うときのために情報が欲しい」「ペット関連のコンテンツを見ているだけで癒される」という層も多いです。
テレビやYouTube、TicTocなどでも、ペット関連の番組や動画が大人気ですよね。
また、「将来は動物に関わる仕事がしたい」という学生は非常に多く、専門学校なども充実していることから、進学系やリクルート系の媒体でもペット系の需要は高くなっています。
飼い主やペット業界志望者の情報源として、さらにはエンターテイメントとしても、ペット系の取材記事は幅広い読者層に求められているのです。
ペット市場が成長&複雑化しているから
ペット産業は、急速な変化と成長を続けている業界です。
個人宅で飼育できるペットの種類は昔よりも増えていますし、ペットの飼育に関わる新しい製品やサービス、技術も続々と登場していますよね。
「ひと昔前までは良いとされていたことが、今はNG」といったケースも、この業界では珍しくありません。
ペット業界の新たなトレンドや動向を理解するためには、業界の専門家から直接情報を得ることが重要になります。
同業者の方々は事業の発展やスキルアップのために「最新情報」や「より良い情報」が知りたいですし、ペット業界志望の学生さんやペットの飼い主さんたちも、自身の目標実現やペットの幸せのために、これらの情報を必要としているようです。
ペット業界は課題の多い産業だから
ペット業界は、急速に発展している一方で、さまざまな課題も抱えている業界です。
動物に関する法規制の変化、飼育環境の改善、動物愛護・動物福祉の向上など─。
ペット業界のプロフェッショナルたちは、日々そういった問題解決に取り組んでおり、最前線にいる人々への取材ニーズが必然的に高くなるのです。
動物業界が抱えている課題と、その課題に対する取り組みや見解を取材記事で紹介することによって、問題提起&社会全体で課題解決を図ろうとするきっかけを作れるかもしれません。
たとえば、ペットの飼育放棄問題が広く知られて、保護猫や保護犬の里親探しが活発になっていったり、過剰繁殖の問題を知った飼い主や地域の人々が対策を取ったりするのも、取材記事や番組がもたらす成果のひとつだと言えるでしょう。
ペット業界にはどんな仕事がある?
ペット業界には、動物医師や動物看護師、ペットショップ店員、トリマー、トレーナー、ブリーダーほか、さまざまな職業が存在しています。
取材をするときには、まずインタビュイーの職業について基本的な理解が必要になるため、ペット関連の代表的な職業と仕事内容を整理しておきます。
職業 | 仕事内容 |
動物医師(獣医) | ペットの健康を管理し、病気の診断や治療を行う専門家。予防医療、緊急医療、手術など、さまざまな役割を果たす。 |
動物看護師 | 動物医師を補助し、動物の健康管理や治療に関与する。診療補助、検査、治療など、さまざまなタスクを行う。 |
トリマー・グルーマー | ペットの毛のカットやシャンプー、爪切りなどを行って、ペットの美容と衛生管理を担う専門家。 |
ペットシッター | 飼い主が不在の間、ペットの世話をする仕事。食事の提供や散歩、遊びなどを通じて、ペットの日常的なニーズを満たす。 |
ペットトレーナー | ペットの問題行動を改善したり、新しいスキルを教えたりする専門家。しつけや訓練方法のアドバイスも提供する。 |
ブリーダー | ペットの繁殖を行う専門家。遺伝的な特性や健康を維持・改善するために、適切なペアを選定するなどの専門知識が必要。 |
ペットフードメーカー | ペットの栄養ニーズに合わせたフードを製造する。製品開発、品質管理、販売などが主な業務。 |
ペットショップ | 生体のほか、ペットフード、リード、おもちゃなどを販売する。商品の選定からカスタマーサービスまで幅広い業務を行う。 |
飼育員 | 動物園、水族館、保護施設などで動物のケアを担当する専門家。日常的な飼育管理のほか、種の保存活動に参加することもある。 |
動物行動学者 | ペットの行動を科学的に研究する。問題行動の改善や予防についてのアドバイスを提供することもある。 |
動物保護活動家 | 動物の権利を保護し、虐待から動物を守る活動を行う。これには政策提言や啓発活動、レスキュー活動なども含まれる。 |
ペットの死に関わる業者 | ペットの死後の手続きに関わる仕事。葬儀業者、ペット墓地、火葬場の経営者など。ペットと飼い主のお別れをサポートする。 |
ペット系取材のコツ~①事前準備編~
それでは、ペット系の取材のコツについて、具体的に解説していきます。
まずは、取材の準備段階におけるポイントから整理していきましょう。
取材対象者や業界のリサーチをする
前述したように、ひと口にペット業界といっても、さまざまな職種があります。
取材をする前には、インタビュイーが携わっている仕事の内容や、所属している組織(動物病院、トリミングサロン、ペットショップ、ペット関連企業、動物愛護団体など)について、しっかりとリサーチを行ってください。
インタビュイーのバックグラウンドや経験について、あらかじめ知っておくことで、より深い質問と対話が可能になります。
また、インタビュイーが属する業界の最新トレンドや課題についても調査し、概要を理解しておくと良いでしょう。
取材現場について理解する
取材が行われる場所や状況について、事前に把握することも大切です。
もし、動物病院、動物保護施設、ペットショップ、動物園、ペットの訓練場など、インタビュイーの仕事現場で取材をするのであれば、その場所のルールについて基本的な理解を持つことが求められます。
これは、現場スタッフの作業を妨げたり、ペットや動物たちにストレスを与えたりすることなく、取材を進めるためです。
特定の職業に焦点を当てた取材を行うのであれば、その仕事内容をリサーチをすると思いますので、現場のルールやタイムテーブル、そこにいる動物たちの特性についても一緒に調査しておきましょう。
記事の目的に沿って質問リストを作成する
対人取材では、記事の軸となる質問を事前に準備しておくのが一般的です。
質問するべき内容は、掲載する媒体や読者層、そもそもの記事の目的によって異なるため、メインテーマをよく理解して質問を考案しましょう。
このとき、リサーチした内容を盛り込んでおくと、より深い洞察や興味深い話を引き出すことができます。
ただし、単なるQ&Aではなく「対話型」の取材にするために、質問が多くなりすぎないように注意してください。
ゆとりを持たせたほうが、インタビュイーが自由に話す時間を作ることができますよ。
ペット系取材のコツ~②インタビュー編~
次に、インタビューの現場で押さえておきたいポイントの解説です。
スムーズに良質なインタビューを実現するためのコツを3つピックアップしました。
ペット業界のマナーを遵守する
ペット業界には特有のエチケットやマナーが存在します。
インタビュー中にペットと直接触れ合う場合は、事前に許可を得ることはもちろん、何に注意するべきかを確認しておくと安心です。
飼い主にとってペットは家族の一員であり、ペット業界で働く人々は、その命と健康を大切に守っています。
ペットの健康と安全に対する尊重や配慮が欠けていると、一気にインタビュイーからの信頼を失ってしまうので、敬意と配慮を忘れないことが大切です。
ペットの死など、感情的に負担になるリスクがある話題を扱うときも、十分な配慮をしながらインタビューを進めてくださいね。
疑問点はチェックバックしながら進める
ペット関連の仕事は非常に専門性の高い分野で、しっかり事前リサーチをしたとしても、そのすべてを理解することは難しいと思います。
そのため、インタビュイーが使う専門用語や概念を理解できなかった場合は、聞き流さずに確認することをおすすめします。
気が引けるかもしれませんが、相手は何年もかけて専門知識や技術を身につけてきたのですから、数時間のリサーチで理解し切れないのは当然のことです。
チェックバックしながら進めたほうが、結果的には記事の精度が上がり、インタビュイーの専門知識を正確に伝えることができますよ。
リラックスした雰囲気を作る
ペット業界で働く人々は、動物たちがリラックスして安心できるように、「いつも配慮している側」の人たちです。
特に取材現場にペットや動物がいる場合は、その子たちにストレスを与えないよう、インタビュー中も気を張っていることでしょう。
そのようなシチュエーションの中でインタビュイーにリラックスしてもらうためには、こちらも動物たちに対する配慮を欠かさないことが大切です。
聞き手と話し手の双方がリラックスして自然な対話ができていると、大抵の取材はうまくいきます。
ペット系の取材は、同席する動物たちもリラックスできる環境で進めていきましょう!
ペット関連の取材で役立つ質問例
ここでは、ペット系の取材をするときに役立つ質問の例をご紹介します。
ペット業界の取材記事には、専門学校のパンフレットやHP、関連企業や動物病院の人材募集、業界のトレンドや課題の発信、ペットにまつわる感動的なストーリーなど、さまざまな種類がありますので、案件に合わせて「使えそうな質問」をセレクトしてくださいね!
ペット業界に進んだきっかけ
進学系やリクルート系の記事では鉄板の質問ですね。
また、その他の記事においても、インタビュイーの人柄やバックグラウンドを示したいときに、説得力をプラスできる内容になります。
ペットに関わる仕事に携わっている人々は、共通して「動物が好き」という気持ちを持っていますが、「仕事にしたい!」と決心するまでには、十人十色のストーリーがあるもの。
どのような類の記事においても、動機・きっかけについては高頻度で言及されています。
日常の業務内容
主にペット業界を志す学生さんなどをターゲットとした内容ですが、飼い主さんたちにとっても、ペットの飼育をサポートしてくれる人々に対する理解を深める機会になります。
ペットがいない一般の読者にとっても、動物好きなら興味を引かれる内容です。
概要を述べるだけではなく、日々のタイムテーブルを紹介したりすると面白そうですね。
また、動物愛護団体などの活動内容を取材記事で詳しく発信することは、動物福祉や倫理面の啓蒙にも大きな役割を果たすでしょう。
仕事のやりがい・印象的なエピソード
ペット関連の仕事に対する、具体的なイメージを引き出すことができる質問です。
進学系やリクルート系の記事では鉄板ですし、インタビュイーの情熱や人物像が間接的に伝わる内容でもあるので、幅広いタイプの記事で使いやすいでしょう。
動物病院、トリミングサロン、ペットショップほか、ペット関連企業のPR記事においても、中で働いている人々の思いや具体的なエピソードを紹介することは、顧客の安心感と信頼を得るために役立ちます。
その職業に就くために必要なスキルや資格
動物が好き、小さい頃からペットと一緒に暮らしていたなどの理由から、「ペットに関わる仕事をしたい!」と希望する学生は非常に多いです。
しかし、ペット関連の仕事に就くためには、特殊なスキルや資格が必要になることも事実。
ペット業界を志望する場合は、専門学校などに進学するのが一般的なルートです。
そのため、特に進学系の記事では、スキルや資格に関するヒアリングが必須となるでしょう。
リクルート系の記事においても、資格や学校で学んだ内容+αで必要なスキルを尋ねると、就活生に有益な情報を提供できますよ。
直面している課題とアプローチ
ペット産業は、法規制の変化、動物愛護にもとづいた飼育環境の保持・改善、動物愛護・動物福祉など、さまざまな課題を抱えている業界です。
ペット関連の仕事は多岐にわたりますが、どのような職種に携わる方でも、多かれ少なかれ何らかの課題に直面していると言って差し支えないでしょう。
現場の人々が感じる課題意識や解決へのアプローチを記事で紹介すると、同業者にヒントを与えたり、その問題を知らなかった層に「気づき」をもたらしたりすることがあります。
インタビュアー自身やペット業界の未来について
どのような種類の記事においても、「未来のビジョン」や「目標」をヒアリングしておくと、記事の締めくくりに使いやすいので重宝します。
インタビュアー個人の目標、組織(動物病院・トリミングサロン・ペットショップ・ペット関連企業など)としてのビジョンなど、記事の目的に合わせて聞き分けると良いですね。
ペット業界全体の動向や課題に深く切り込むタイプの記事であれば、業界全体の未来に関する見解も尋ねてみましょう。
ペット関連で参考になるインタビュー記事の例
最後に、インターネット上に公開されているペット系のインタビュー記事の中から、取材&執筆の参考になりそうなものをピックアップしてご紹介します。
トリマー 小嶋 利咲さんのインタビュー記事
記事タイトル:犬の気持ちになって、飼い主にサービスを提供する醍醐味
高校生のための進路サイト【進路ナビ】に掲載された記事。動物に関わる仕事を志したきっかけ、夢を叶えてからのキャリア変遷、仕事への情熱と信念、高校生へのアドバイスなど、ペット業界を志す学生さんに役立つ情報が満載!
ドッグダイナー株式会社 笹生 真彩子さんのインタビュー記事
記事タイトル:『犬にとって最高のもの』を追求して誕生したDog Diner椀
犬の食品をメインとしたオンラインサイトを運営する笹尾さん。「ひとりでも多くの方に正しい知識を持ってほしい」という思いで多くの取材を受け、愛犬の健康管理に役立つ情報を発信している。上記の記事は公益社団法人アニマル・ドネーションWebサイトに掲載。
大分小動物病院 看護主任・坂本さんのインタビュー記事
記事タイトル:動物が好きだけではできない。自分なりの「楽しみ」を仕事の中で見つけてほしい。
大分小動物病院のHPに掲載されている動物看護師インタビューの第3弾。動物看護師の仕事の実態が、その醍醐味や厳しさも含めてリアルに語られている。同院への就職希望者はもちろん、動物看護師を志している多くの人々に一読してほしい記事。
獣医師 鈴木 淑剛(よしたけ)さんのインタビュー記事
記事タイトル:【獣医師取材】飼い主さんとペットの幸せコーディネート|鈴木淑剛先生
犬や猫はもちろん、爬虫類や小動物をはじめとしたエキゾチックアニマルの治療も行っている鈴木先生。診療に対する真摯な思いはもちろん、飼育崩壊や被災動物に関わる取組みなども必読の内容。株式会社アニぴたるの公式ブログ【アニてぃくる】掲載。
NPO法人ファミーユ 代表。熊崎 純子さんのインタビュー記事
記事タイトル:NPO法人ファミーユが掲げる、「すべての犬・猫が幸せになれる世界に」
名古屋市で動物の保護活動を行うNPO法人の代表・熊崎さんが、活動内容の詳細や動物福祉における課題についての見解を述べる。保護活動に興味を持つ方々へのアドバイス、ペットの飼い主に向けたメッセージも必読。【FIND THE TOKAI】掲載。
まとめ
たくさんの人々が興味を持つペット関連の取材記事。
ペットの飼い主やペット業界を志望する学生さんに役立つ情報を発信したり、ペット業界の発展や問題提起&課題解決のヒントを提示したり、動物が大好きな読者に癒しを与えたり、記事が果たせる役割は非常に幅広いです。
この記事でご紹介した取材のコツやポイントをもとに素敵な取材をして、読者にもインタビュイーにも喜ばれる記事を書いてくださいね!