飲食店、レストラン、シェフ、パティシエに取材!飲食業界取材のコツを解説

飲食店やレストランは人々の日常生活に欠かせない存在であり、食の喜びは日々に彩りを与えてくれるもの。
その背後にいるのが、シェフやパティシエなどの熟練したプロフェッショナルたちです。

シェフやパティシエへの取材は、飲食店やレストランの魅力を伝えるとともに、彼らの才能や努力に光を当て、さまざまなインスピレーションを与えてくれます。

この記事では、飲食業界の取材のコツやポイント、注意点などを一挙に解説していきます。

【こんな方におすすめ!】

  • はじめてシェフやパティシエにインタビューをする方
  • 料理やお酒などの知識に自信がなく、シェフとのコミュニケーションが不安な方
  • 質の良いインタビューをして、お店やシェフ・パティシエの魅力をしっかり伝えたい方

飲食業界の取材ニーズが高い理由

飲食店やレストラン、シェフ、パティシエの取材記事は、紙媒体・Web媒体ともに、数が非常に多いです。
まずは、飲食業界の取材ニーズが高い理由を考察してみましょう。

理由1)食事は「生きる喜び」だから

「食」は人間の三大欲求のひとつであり、生きるために欠かせないものですが、食事には「生命の維持」のほかにも、さまざまな意義があります。
おいしいものを食べることによって日々のストレスを解消したり、気心の知れた仲間と食事を楽しんだり、知り合ったばかりの相手と食事会で親交を深めたり─。

人間にとって「食べること」は直接的にも間接的にも価値が大きく、たくさんの人々の関心を引くからこそ、飲食業界の取材ニーズは高くなっています。

理由2)食文化の多様性が興味を引くから

飲食業界は、さまざまな国や地域の食文化が交錯する場です。
人々は、新しい味を求めたり、異文化を理解したりするために、異なる国や地域の料理に興味を持ちます。
それは海外に限ったことではなく、国内旅行に行ったときでも、ご当地料理、お土産、地酒などが、旅の大きな楽しみになっていますよね。

「旅行先でおいしい郷土料理を食べたい」「評判のいいシェフの料理を食べてみたい」「その店でしか食べられないスイーツを食べてみたい」などのニーズが高いことから、おのずと飲食業界の取材記事は多くなるのです。

理由3)シェフやパティシエの才能やクリエイティビティが注目されるから

シェフやパティシエは、さまざまな食材を使って、驚くべき料理やスイーツを生み出す才能とクリエイティビティを持っています。
素材の選定、味付け、盛り付けに至るまで、まさにプロフェッショナルの技。

シェフやパティシエが腕を競うテレビ番組などの人気が高いことからもわかるように、彼らの技術やアイデア、インスピレーションに触れることは、人々にとって非常に興味深いことなのです。
彼らの仕事や創造性にスポットを当てた取材記事は、老若男女を問わず多くの読者を惹きつけるでしょう。

理由4)飲食業界は競走が激しいから

飲食は生活に欠かせない存在であり、多くの人々からのニーズがあります。
そのニーズの高さから、日々数え切れないほどの飲食店やレストランが開業している一方で、激しい競争の中で生き残れない店舗があるのもまた事実。

そのため、飲食店やレストランの経営陣、シェフ、パティシエなどは、成功事例や経営手法、トレンドに敏感な店舗に注目し、経営の秘訣やヒントを知りたいと思っているのです。
また、飲食業界の最新の動向や市場状況に関する情報も求められています。

飲食店・レストラン・シェフ・パティシエ取材のコツ~①事前準備編~

記事作成に必要な情報・より有意義な内容を限られた時間の中で聞き取るためには、事前準備をしっかりと行って取材に臨むことが大切です。
事前準備が甘いと、インタビュー中に十分な情報を聞き取れなかったり、インタビュイーに気をつかわせる・不快な思いをさせてしまったりするリスクもあります。
まずは、飲食業界の取材における事前準備のコツやポイントを整理していきましょう。

記事の目的と読者のペルソナを明確にする

飲食業界の取材記事は各方面からのニーズが高く、関連記事は多岐にわたります。
たとえば新しいレストランや食べ物を紹介する記事、シェフやパティシエの素顔に迫るインタビュー記事、食品の健康効果やレシピにスポットを当てる記事など、さまざまなテーマがありますよね。

そのため、取材を行う際には、記事の目的と読者のペルソナを明確にすることが非常に重要なのです。
「何を伝えたいのか(記事の目的)」を明確にして、読者のペルソナを把握することで、記事の方向性やインタビューで聞き取るべき情報が定まります
的確な取材をすることで、読者にとって有益かつ興味深い情報を提供でき、効果的な情報発信と収益の最大化が見込めるでしょう。

取材対象のバックグラウンドをリサーチする

飲食業界の取材記事には、飲食店やレストランなど「店」にスポットを当てるものと、シェフやパティシエなど「個人」にフォーカスするものがあります。

「店」が取材対象の場合は、公式サイトや公式SNSをチェックして、店のコンセプトやメニュー、口コミ情報なども見ておくと良いでしょう。
シェフやパティシエなど個人を対象とする取材では、個人の経歴や受賞歴、独自の料理スタイルなどについて、可能な限り情報収集するのがおすすめです。

事前にリサーチすることによって、基本情報を聞き取る時間を節約し、より深い洞察や興味深い話題にフォーカスできるようになります。
また、事前のリサーチをしっかり行うことによって、会話の中で取材対象者に敬意を示すこともできるでしょう。

質問リストを作成して共有する

飲食業界の取材に限ったことではありませんが、一般的に対人取材では軸となる質問をあらかじめ準備しておきます。
ただし、質問が多すぎると柔軟性に欠けてしまい、相手の本音を引き出すことが難しくなるので、詰め込みすぎは禁物です。
「これだけは欠かせない!」という質問をいくつかピックアップしておき、取材依頼書とあわせてインタビュイーに共有しておきましょう。

一方、飲食業界の毎日は非常に多忙であり、特に飲食店やレストランなどの現場にいる方々は、スケジュールの予測がつきにくい場合もあります。
あらかじめ取材依頼書や質問リストを送っていても、取材当日までに目を通せないケースも珍しくないため、現場では臨機応変に対応してくださいね。

飲食店・レストラン・シェフ・パティシエ取材のコツ~②取材編~

次に、実際に取材をするときに押さえておきたいポイントの解説です。
飲食店やレストラン、シェフ、パティシエへの取材は、ランチとディナーの合間の時間などに対応してもらうことが多いため、効率よくインタビューすることが重要になります。
また、多忙の中で時間を作っていただくので、相手が気持ちよく話せるように配慮しましょう。
ここでは必ず遵守したいポイントを3つ挙げて、それぞれを具体的に解説していきます。

時間の制約に配慮する

飲食業界は、自分の意思で時間をコントロールすることが難しい業界です。
混み具合やオーダーによって状況がめまぐるしく変わりますし、たとえ営業時間外・休業日であっても、事務作業や翌日の仕込み等に追われていることもあるでしょう。
取材のために確保できる時間も、他業種の取材と比べると短い30分~40分程度であることも珍しくありません。

そのため、インタビュアーは常に先方の時間的制約に配慮する必要があります
できるだけ先方に負担のない時間帯にアポイントを取り、取材中も「予期せぬ事態」が起こりうることを念頭に置き、柔軟に対応することが大切です。
どのような職種の方も忙しいことに違いはありませんが、飲食業界は緩急のスパンが短いので、配慮を怠らないようにしましょう。

インタビュイーの個性やこだわりを尊重する

飲食業界は多様性にあふれ、競争も非常に激しい世界です。
そのため、シェフやパティシエはもちろん、経営に携わる人々からホールの統括を担う人々に至るまで、確固たる信念やこだわりを持っていることが多いです。
取材中には、インタビュイーの個性や情熱をありありと感じることができる一方で、独特の難しさを感じることもあるかもしれません。

そんなときには、無理をして相手と対等に話そうとするのではなく、相手の話に耳を傾け、その情熱やこだわりに対するリスペクトを示すのが吉。
インタビューでは、ときにインタビュアーが自分の意見を言って話を膨らませていく場面もあると思いますが、あくまで相手の本音を聞き出すための呼び水としてコメントを出すようにしてくださいね。

衛生基準を遵守して現場のルールに従う

飲食店・レストランでは、消費者の安全を守るため、食品衛生や安全対策について厳密なルールを設けています。
店舗内で取材や撮影を行う場合や、厨房やホールの撮影をする場合には、現場のルールに従うようにしましょう。
もしかしたら、「厨房に立ち入らない限りは、お客様と同じレベルのマナーさえ守っていれば良いのでは?」と思う方もいるかもしれませんね。

しかし、インタビュアーは顧客とは違う立場なので、より徹底したマナーが必要になりますし、その姿勢を示すことが相手からの信頼にもつながります
取材中に飲食店やレストランの衛生管理に注意を払うことは、インタビュアーが自らの専門知識と責任感を示すための重要な要素でもあるのです。

飲食店・レストラン・シェフ・パティシエ取材のおすすめ質問例

ここでは、飲食業界(飲食店・レストラン・シェフ・パティシエなど)の取材を行う際に役立つ、おすすめの質問をいくつかご紹介します。
記事の目的、読者層、掲載するメディアなど、それぞれの条件に合う質問を選んで、取材の際に使ってみてくださいね!

インタビュイーのキャリアやお店の歴史

プロフィールやリードに欠かせない基本情報です。
また、深掘りしていくとインタビュイーの人物像をイメージしやすくなり、本文中で読者に親しみを持ってもらうための情報としても使えます。
シェフやパティシエ個人にスポットを当てる記事では、主要トピックとしても十分に押し出せる内容です。

留学経験や各種コンテストの受賞経験など、一般の人から見ると驚くような経験をしている方も少なくない業界なので、ぜひヒアリングしてみましょう。

店のコンセプトやシェフ・パティシエのスタイル

飲食店・レストランやシェフ・パティシエの個性や特徴を読者に伝えるための質問です。
これらを正しく発信することで、そこに共感する人々の来店行動につながるので、特に広報や集客を目的とした記事では欠かせない内容と言えるでしょう。

シェフやパティシエ個人にフォーカスした記事を書く場合は、料理や製菓に対する哲学やインスピレーションについて掘り下げてみるのも良いですね。

料理・製菓の製法やアプローチについて

代表的な料理・製菓の製法や味付けの工夫、メニューの開発・改善へのアプローチ方法などは、顧客目線でも同業者目線でも非常に興味深い内容です。

読者に特徴的な料理や調理法を紹介することで、クリエイティビティにスポットを当てて、店やシェフ・パティシエの魅力やこだわりを伝えることができるでしょう。
地元の食材や伝統的な調理法を取り入れている場合には、その理由や意義について尋ねてみるのもおすすめです。
そうすることで、地域性や文化をリスペクトした深みのある記事が書けます。

最新のトレンドや食のテーマについて

最新の食のトレンドに関する情報も、読者の興味関心を引く内容です。
優れたシェフやパティシエは、流行に左右されない独自のスタイルを持っている一方で、要所要所にトレンドを取り入れて、絶妙に融合させることにも長けています。

また、健康や持続可能性といった食のテーマについても、近年はホットな話題になっているので、ぜひヒアリングしてみましょう。
環境への配慮や健康志向など、社会的に関心の高いテーマに対する具体的な取り組みを紹介すると、飲食店やレストラン、シェフ、パティシエの意識の高さをアピールできます。

お店や個人の目標・将来の展望について

今後の計画や将来の目標に言及すると、インタビュイーののビジョンや成長戦略を読者に伝えることができます。
ある程度ボリュームがあり、店や個人について深堀りするタイプの記事を書くときには、ぜひ聞いておきたい内容です。

飲食業界全体のトレンドや変化に対する対応策なども同時にヒアリングすることで、競争力や進化の過程が、よりイメージしやすくなるでしょう。
「今後、どのような新作料理や新しいプロジェクトに取り組む予定ですか?」など、具体的な計画を尋ねてみるのも良いですね。

飲食店・レストラン・シェフ・パティシエ インタビュー記事の例

最後に、飲食店・レストラン・シェフ・パティシエを対象とした、おすすめのインタビュー記事をご紹介します。

【タイトル】学芸大学の人気酒場『びゃく』が明かす、グルメ激戦区で勝ち抜く「3つの秘訣」

学芸大学の酒場「びゃく」店主・池上善史氏のインタビュー。【飲食店ドットコム】掲載。居酒屋激戦区で不動の人気を誇る秘訣が、3人称の文体で丁寧に紹介されている。経営のノウハウを知りたい同業者はもちろん、良質な店を求める消費者にとっても興味深い記事。

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【タイトル】“無類の料理好き”と “ワインを愛し過ぎる男”が贈る 渾身のコース料理

イタリアンレストラン「リ・カーリカ」のインタビュー記事。インタビュイーはVol.1が店長の石黒誉久氏、Vol.2がシェフの伊藤和道氏。【おいしんぐ!】掲載。料理やワイン、レストランに対する思いが、それぞれの立場からカジュアルかつ情熱的に語られている。

Vol.1はコチラ / Vol.2はコチラ

【タイトル】食を通して、喜びの輪を広げる。 起点は「人」であり、すべてはそこから始まる

日本料理店「神楽坂 石かわ」店主・石川秀樹氏のインタビュー。【Foodion】および石かわグループのオウンドメディアに掲載。見習い時代のこと、現在の仕事について、スタッフへの思い、経営哲学などが等身大の言葉で綴られ、温かさと親しみやすさを抱かせる記事。

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【タイトル】鎧塚 俊彦 パティシエの職人魂を語る。

日本を代表するパティシエ、パティスリー「トシ・ヨロイヅカ」のオーナー・鎧塚俊彦氏のインタビュー記事。【学びの場.com】掲載。メディアでもおなじみの鎧塚氏が、生い立ちや修行時代、製菓への情熱、スイーツを介して切り拓こうとする未来を語っている。

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【タイトル】飲食チェーン店だからこそ、仕事に欠かせないのは職人魂。

愛知県名古屋市を中心に飲食チェーン「ヴォーノ・イタリア」を展開する、株式会社ル・クール代表取締役・橘秀希氏のインタビュー記事。【クックビズ総研】掲載。2009年の初出店からわずか4年弱で全国に約50店舗を展開した、急成長の秘策を知ることができる。

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まとめ

飲食店・レストラン・シェフ・パティシエなどを対象とした飲食業界の取材では、時間の成約への配慮、独自のこだわりや矜持へのリスペクトなど、配慮しなければならない要素が満載です。
難しさを感じることもあるかもしれませんが、多くの人々からの興味関心と取材ニーズが高い業界なので、ライターとしては必ず押さえておきたいところ。

初めて飲食系取材に臨む方や、飲食系取材がうまくいかなかった経験がある方は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね!