自動車業界の取材で押さえるべきポイントは?質問例・おすすめ記事も紹介!

「車離れ」が囁かれている昨今ですが、生活に自動車が欠かせない人や、コアな自動車マニアは今も健在。
自動車専門の雑誌やWebサイトでの執筆は、業界専門のライターが担当しているケースが多いでしょう。

しかし、進学系・リクルート系のメディア、自動車関連企業のオウンドメディアや会報誌等でも、取材をともなう記事の需要があります。
つまり、自動車専門のライターではなくても、自動車に関わる記事を書く機会が突如として訪れる可能性はあるのです。
そこで今回は、自動車系の職業の方に取材をするときのコツ・ポイントを解説します。

【こんな方におすすめ!】

  • はじめて自動車系の取材をするため、事前準備やインタビューのコツを知りたい方
  • 車に詳しいほうではないので、良いインタビューができるかどうか不安な方
  • 自動車系の取材で充実した記事を書くためのポイントを押さえたい方

自動車系の仕事は多種多様

自動車に関わる職業は、非常に多岐にわたっています。
取材をして記事を書く際には、取材相手の仕事内容について知ることが重要です。
そこで、まずは自動車系の職業を一覧にまとめました。
メジャーなものから一般ではあまり耳慣れないと思われるものまで、ひと通りご紹介しますので、ざっくりと把握してみてください。

自動車をつくる

自動車の製造に関わる仕事には、以下のような種類があります。

自動車デザイナー車の外観や内装をデザインするアーティスト。トレンドや技術を取り入れながら、車両コンセプトやイメージを形にしていく。
自動車エンジニア
・機械工学者
車の動作原理や性能を最適化する技術者。新技術の採用や燃費の改善など、車の機能や安全性、環境への配慮等を追求する。
生産・製造エンジニア 生産ラインの効率化や品質向上を目指す職種。部品の組み立てから完成車の出荷まで、最適な生産プロセスを構築・管理する。
品質保証・品質管理製品の品質を保証する専門家。不具合や欠陥を未然に防ぎ、顧客に安心して使用してもらうための品質基準を守る。
部品業者自動車の部品を製造・供給する業者。安全で高品質な部品を迅速に提供することで、車の生産をサポートする。
カスタマイズ・
チューニングアップ
車の外観や性能をカスタマイズする職種。顧客の要望に応じて、オリジナルの車両を作り上げる。

自動車を売る・貸す

自動車販売店、いわゆる「ディーラー」も多種多様です。
また、昨今はレンタカーやカーリースの需要が高まり、関連業種が増えています。

正規ディーラー特定の自動車メーカーと正式に契約している販売店。主に新車の販売を行う。メーカーの保証やアフターサービスを提供する。
中古車ディーラー中古車の販売を専門に行う販売店。車種やメーカーを問わず、多岐にわたる車両を取り扱うことが多い。
輸入車ディーラー海外メーカーの車を輸入して販売する専門店。ヨーロッパ、アメリカ、アジアなどの輸入車を取り扱う。
大型車ディーラートラックやバスなどの大型車を専門に取り扱う販売店。商業用、産業用の顧客をターゲットとすることが多い。
バイクディーラー二輪車やスクーターを専門に取り扱う販売店。
専門車ディーラースポーツカーやクラシックカー、特殊車両など、特定のカテゴリに特化した販売店。
オンライン
カーディーラー     
インターネットを主な販売チャンネルとする販売店。車両の情報や写真、価格などをオンライン上で公開し、購入手続きもオンラインで行えることが多い。
レンタカー店・
カーリース店
短期または中長期にわたる車のレンタルサービスを提供する店舗。車の販売を行っているケースもある。

自動車やドライバーを守る

ガソリン店自動車に燃料を供給する施設。ガソリンやディーゼルのほか、潤滑油や車関連商品を提供。車検や洗車サービスを行う場合もある。
カー用品店車関連商品の販売を行う。タイヤ交換などのメンテナンス、車検を取り扱い、カーライフを全面的にサポートする店舗もある。
自動車整備士・
自動車修理技術者 
自動車の故障や不具合を診断・修復する専門家。技術的な知識や経験を活かし、車を最適な状態に保つことで、安全を守る役割を担う。
自動車保険代理店自動車の事故やトラブルに備える保険を提供。顧客のリスクを最小限にして、ドライバーが安心して運転できるようサポートする。
自動車安全専門家  車の安全性を評価・向上させる専門家。最新の安全技術や基準を研究し、より安全な自動車の開発を目指す。

完成車や部品の流通を管理する輸送・物流業者、バス・タクシー・トラックの運転手、自動車学校の教官、自動車レーサーなども、広義では自動車に関連する職業の一種と言えます。

自動車系の取材記事が載るメディアとは?

自動車系の取材記事は、さまざまなメディアからの需要があります。
下記にメディアの種類と想定される内容をまとめましたので、参考にしてみてください。

メディアの種類テーマ・内容
自動車雑誌新車情報やテストドライブのレビューを提供。業界の最新ニュースやトレンド、専門家のインタビューも掲載。読者は車愛好家や購入検討者。代表的なタイトルに「CAR」や「Motor Trend」など。
ビジネス雑誌・新聞自動車産業の経済面に焦点を当て、市場動向、企業戦略、M&A情報などを扱う。ビジネスマンや投資家向け。代表的なタイトルに「Forbes」、「Wall Street Journal」など。
技術・工学系雑誌自動車の技術面を深掘りする媒体。新技術、研究開発の動向、エンジニアのインタビューなどが掲載される。技術者や研究者の読者層。代表的なタイトルは「SAE International」。
カーライフに関わる雑誌      
・Webメディア
カーライフに焦点を当てた媒体。高級車やクラシックカーの特集、車を活かした旅行や趣味の紹介のほか、ユーザーのインタビューなども掲載される。ターゲットは一般消費者やファッション志向の読者。
オンラインメディア車のレビューブログ、動画チャンネル、ニュースサイトなど。幅広い年齢層のユーザーが対象となる。インターネットの速報性と多様性が特徴。
ショーや展示会の     
公式媒体
業界イベントの情報集約。出展者情報、セミナーの案内、新製品紹介など。業界関係者や報道関係者が主要読者。運営企業の代表者インタビューなどが掲載されるケースが多い。
環境関連のメディア自動車とは切っても切れない環境技術やサステナビリティに焦点を当てる媒体。電動車、エコ技術の紹介や、環境に優しいドライブ方法など。環境意識の高い読者がターゲット。
関連企業のHP・
オウンドメディア
企業が独自に運営する公式Webサイトやプラットフォーム。新商品の情報、企業の取組み、技術の紹介などを発信し、マーケティングやPR、顧客コミュニケーションの場としても機能する。
進学系・リクルート系の
メディア
自動車業界を志す学生への情報提供を目的とした学校パンフレットやWebサイト、企業HPの先輩インタビューなど。進路選択、キャリア形成、業界研究の参考資料として利用される。

自動車系取材のコツ~①事前準備編~

それでは、自動車関連の職業の方に取材をするときのコツを解説していきましょう!
まずは取材前のリサーチ段階で押さえるべきポイントからです。

取材相手や業界についての事前調査を行う

対人取材では、事前調査の有無がインタビューの質を大きく左右します
まずはインタビュイー(取材対象者)の職務内容や経歴について把握しましょう。
発注元から事前に資料をもらえる場合もありますが、仕事内容や在籍企業等については、自分でも詳しく調査しておくのがおすすめです。
過去のインタビュー記事や発表がある場合は、目を通しておくと良いですね。

次に、自動車業界の現在の動向やトピックスを理解するための基礎知識を身につけます。
検索すると自動車業界に特化したWebサイトやニュースサイトが複数HITしますし、一般向けのネットニュースにも自動車系のトピックは数多く出ています。
専門用語なども多い業界なので、完璧に把握するのは難しいですが、無理のない範囲でリサーチをしてみてください。

記事に合わせて質問リストを作成する

インタビューをスムーズに進めるためには、主要な質問を事前にリストアップしておくのがおすすめです。
作成したリストを手元に置いておけば、必須情報の聞き漏れを予防できますし、話が逸れてきたときの軌道修正もしやすくなります。
質問は記事の目的(テーマ・方向性・読者ターゲット等)に合わせて、執筆するときにマストと思われるものをピックアップしてください。

注意点としては、あまり多くの質問を準備しすぎないように心がけましょう。
インタビューでは往々にして、ひとつの質問から膨らんだ話題や偶発的に出た話題の中に、面白い内容が含まれることがあるからです。
逆に言うと、質問が多すぎてQ&Aのようになってしまうと、インタビュー中も記事化したときも面白みがありません。
マストの質問は「ちょっと少ないかな?」程度に抑えて、余白を残しておきましょう

スケジューリングと場所の選定

こちらはライターより編集者や広報の方に関わりがある内容かもしれませんが、自動車系の取材で意識しておきたいポイントです。
もちろん職種によって異なるのですが、自動車に関わる職業の方は、不規則なスケジュールで職務にあたっているケースも少なくありません。
取材日程を決める際には、できるだけ相手の負担にならない日時をヒアリングしましょう。

また、自動車系の取材記事では、視覚的な素材があると大変見栄えがします
取材場所を決める際には、インタビュイーの希望や事情に沿いつつ、業界の雰囲気を感じられる場所での実施を検討できると良いですね。
先方の職場が取材場所に決まった場合には、ぜひ写真撮影と掲載の許可をもらいましょう!

自動車系取材のコツ~とポイント~②インタビュー編~

次に、自動車系職業の方へのインタビューにおいて、実際の現場で話を進めるときのコツをご紹介します。

中立な態度を保つ

すべての対人取材に言えることですが、インタビュアーはあくまで「聞き手」の態度に徹する必要があります。
自身の意見を呼び水として対話を展開させるシチュエーションはありますが、自分の意見を主張しすぎることはご法度なのです。

これは奇しくも、インタビュイー自身が自動車愛好家であったり、業界に関する知識に明るかったりする場合は、特に注意したいところ。
プライベートの会話でも、j自分の「思うところ」が多くなるほど、相手の意見にかぶせて発言してしまったり、「でも」が多くなってしまったりしますよね。
しかし、インタビュイーは「聞き取り」のプロとして、あくまで中立の立場を保つ必要があります。
自動車は生活に身近な存在であるからこそ、中立的で俯瞰した目線を見失わないように意識しておきたいところです。

具体的な話題を持ち込む

自動車業界のインタビューでは、具体的な話題を持ち込むこともポイントになります。
この業界は技術革新が盛んで、市場の動向も絶えず変化しているため、抽象的な情報や質問では深い洞察を得ることが難しいのです。
具体的な聞き方をすることで、インタビュイーは自分の経験や知識に基づいた回答をすることができます。

たとえば、「電動車の市場についてどう思いますか?」のような質問の仕方は、あまりおすすめできません。
「最近○○モデルの電動車が注目を浴びていますが、その要因や今後の展望は?」という具体的な問いかけのほうが、詳細な情報や専門的な見解を引き出せるでしょう。
注目の車種、最新技術、市場の動向の事例などをリサーチしておき、質問に盛り込んでいくと良いですよ。

相手を尊重する&チェックバックを行う

どのような業界でも、インタビューでは相手を尊重してチェックバックしながら進めることが極めて重要です。
まず第一に「相手を尊重」するという姿勢は、信頼関係の構築につながります。
自動車業界は、技術的にもビジネス的にも複雑かつ奥が深い世界です。
その背景や情報を正確に伝えるためには、インタビュイーの専門知識や経験に敬意を払うことがマストになるでしょう。

また、自動車は一般的になじみの深い存在でありながら、専門性の高い分野でもあります。
自動車業界の人にしかわからない専門用語や知識も多いため、常にチェックバックをしながらインタビューを進めるのがおすすめです。
チェックバックのプロセスは、話を理解しようという努力を示す行為でもあります。
尊重の一環としても大事なことなので、ぜひ意識してみてください。

自動車系の取材で役立つ質問例

自動車系の職種の方へのインタビューでは、基本的な質問を押さえたうえで、専門分野や業界の動向に迫る質問をするのが良いでしょう。
一般的な質問から専門的な質問まで、おすすめの質問をピックアップしてみました。
あくまで下記は汎用的なものなので、案件ごとにカスタマイズしてくださいね!

基本的な質問

「これまでの経歴をお聞かせください。」
「現在の職業について簡単に説明していただけますか?」
「この業界でキャリアを始めようと思った理由は何ですか?」
「日常の業務内容を教えてください。」

職業人の取材をするときには、ジャンルを問わずマストの質問になります。
インタビューのウォーミングアップとしても使いやすい質問です。
原稿の執筆にあたっては、プロフィールや記事の導入部分、写真キャプションなどにも役立つ内容ですよ。

業界の動向・技術に関する質問

「近年の自動車産業の大きな変化は何だと思いますか?」
「電動車や自動運転技術の進化についての意見や考えをお聞かせください。」
「環境問題と自動車業界の関係について、どう考えていますか?」

経営者インタビューや、自動車産業に長く携わっている方にインタビューをする際には、ぜひヒアリングしてみたい質問です。
掲載媒体としては、自動車系や工学系、ビジネス系の専門雑誌やWebサイト、関連企業のオウンドメディアや社内報などが想定されます。

キャリア・経験に関する質問

「これまでのキャリアの中で印象的だった経験は何ですか?」
「この業界で成功するための秘訣は何だと思いますか?」
「新人や業界に興味を持つ学生さんへのアドバイスをお願いします。」

進学系・リクルート系メディアや企業の採用サイトはもちろん、自動車業界の若手に向けた記事においても、需要の高い質問です。
また、上記以外の記事タイプであっても、1つのトピックとして取り上げやすいでしょう。

業界の未来・ビジョンに関する質問

「10年後の自動車産業をどのように予想しますか?」
「次の大きな革新となるトレンドは何だと思いますか?」
「あなたの業務や専門分野が未来の社会に与える影響について教えてください。」

「業界の動向・技術に関する質問」と同様、やや玄人向けの質問になります。
自動車系や工学系、ビジネス系の専門雑誌やWebサイトのほか、新聞(一般紙・経済紙)などでも扱われる可能性があります。
また、関連企業の社内報やオウンドメディア等でもテーマになりやすい内容です。

パーソナルな質問

「あなたのお気に入りの車種やモデルは何ですか?」
「休日はどのように過ごされていますか?」
「仕事以外での趣味や関心は何ですか?」

読んでいて「面白い!」と感じる記事は、インタビュイーの人柄が読み取れる記事であることが多いです。
プロフィールの作成にも役立ちますし、オーダー時にマストのトピックとして指定されていない場合でも、軽く聞き取りをしておくことをおすすめします。
ただし、相手に失礼がないよう、マナーを守った質問を心がけてくださいね。

自動車系取材記事のおすすめ例

最後に、自動車業界で働く人々へのインタビュー記事の中から、おすすめ記事を5つピックアップしてご紹介します。

外車王セールスマン 松村 透さんのインタビュー記事

記事タイトル:輸入車ディーラーのトップセールスマンが語る「本音と裏事情」とは?

【外車王SOKEN】掲載。インタビュイーは輸入車の輸入・販売を手がける「外車王」の松村さん。ディーラー目線で率直に語られる顧客の関係性、輸入車ならではの魅力、セールスマンとしての心構え等、読み応えたっぷりの内容!

自動車整備士 秋山 慎太郎さんのインタビュー記事

記事タイトル:整備工場やディーラーは車を預けた後は引き取りしか接点がなく、セイビーはお客様との距離が近い

プロの整備士と顧客のマッチングを叶える「Seibii(セイビー)」Webサイトに掲載された記事。セイビー登録の整備士として活躍中の秋山さんが、フリーランスになるきっかけや働き方の魅力、整備士としての目標などを、ざっくばらんに語っている。

カーデザイナー 木越 由和さんのインタビュー記事

ページタイトル:現役のカーデザイナーに聞きました 本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン室 室長 木越 由和さん

東進が運営する職業案内サイト【未来の職業研究】に掲載。車好きが憧れる職業の一つでありながら、なかなか全貌が知られていないカーデザイナーの仕事。仕事内容から1日のタイムスケジュールまで網羅した充実の内容で、カーデザイナー志望の学生は必読!

ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長 マーティン・パーソン氏のインタビュー記事

記事タイトル:ボルボ・カー・ジャパン マーティン・パーソン社長に聞く 2023年の戦略は「BセグのSUV電気自動車で勝負」

国内でも人気の輸入車VOLVOのマーティン・パーソン社長が、年間計画を軸に業界のトレンドや中長期的な展望にも言及している記事。玄人向けの記事である一方で、随所に親しみやすい人柄を読み取ることができ、国外の車事情など興味深い内容に引き込まれる。

カーチューナー 雨宮 勇美さんのインタビュー記事

記事タイトル:ロータリーエンジンの名チューナー雨宮勇美 インタビュー「健康の秘訣は“昼寝”。まだまだ面白い車を作りますよ!」

中古車の「カーセンサー」Webサイトに掲載された記事。インタビュイーは有限会社REの代表であり、2006年の全日本GT選手権で優勝を果たした熟練カーチューナーの雨宮さん。車に対する情熱と魅力的なパーソナリティに目が離せなくなる良記事。

まとめ

自動車業系の取材では、業界特有の技術や市場の動向を理解する必要があり、他の業界よりも難しいと感じる方も少なくないでしょう。
しかし、インタビューを成功させるために一番大切なのは、基本的な取材の原則を守ることです。
ていねいに事前調査を行って、インタビュイーの話を尊重し理解するための努力を忘れなければ、自然と信頼関係が築かれるはず。

自動車業界のプロフェッショナルたちの言葉は、読者が自動車の技術やトレンドを理解するために役立っています。
その知識や情報を正確かつ効果的に伝えるためにも、真摯な姿勢を忘れずインタビューに臨みましょう!