鉄道業界は、今も昔も熱心なファンが多い世界です。鉄道ファンの愛読雑誌は根強い人気を誇っていますし、かなり専門性の高いWebサイトなども存在しています。
これだけ注目度の高い業界ですから、「鉄道関係の仕事に就きたい!」と希望する若者も多いです。そのため、特に進学系やリクルート系のサイトでは、鉄道系のインタビュー記事をよく見かけます。
その一方で、日常的に利用はしていても、「コアな鉄道ファンが話す内容や仕事の裏側は未知の世界…」というライターや編集者の方が少なくないのではないでしょうか?
そこで今回は、鉄道系取材のコツやポイントについて解説していきたいと思います。
【こんな方におすすめ!】
- 鉄道系の取材オファーを貰ったけど、業界知識がなく不安な方
- はじめての鉄道系取材で、必ずおさえておきたいポイントを知りたい方
- 読みごたえのある記事につながるインタビューの極意を知りたい方
鉄道に関わる仕事の種類
鉄道に関わる仕事といえば、運転士さん、車掌さん、駅員さんなどをイメージする方が多いと思いますが、ほかにも関連の職種はたくさんあります。
どんなジャンルの取材でも同じですが、相手の仕事内容を全くイメージできない状態では、有意義なインタビューをすることはできません。そこで、まずは鉄道関連の職種と、それぞれの仕事内容を大まかにまとめてみました。
職種 | 仕事内容 |
運転士(機関士) | 列車の運転を担当し、安全な運行と時刻表どおりのスケジュールを保持する。緊急時の対応と安全確保も重要な役割。運転中の注意力や忍耐力が求められる。 |
車掌 | 乗客の安全を監視し、車内案内放送や切符の確認を行う。緊急時には適切な対応をとり、乗客の安全と快適な旅を提供する。責任感に加えてサービス精神も必要。 |
駅員 | 切符販売、案内業務、乗降時のサポートなどを行い、乗客の疑問や問題を解決する。駅の安全と秩序の維持に努め、快適な駅利用環境を提供する。 |
カスタマーサービス ・案内スタッフ | 顧客対応や情報提供、問い合わせへの対応を行う。乗客に対して親切かつ効率的なサービスを提供することで、顧客満足度の向上に貢献する。 |
鉄道技術者・ エンジニア | 線路、車両、信号システムの設計、建設、保守に関わる専門家。技術的な問題解決と新技術の導入を行い、鉄道の安全性や効率性を高める。 |
保守作業員 | 鉄道設備の日常的なメンテナンスと修理を行い、安全でスムーズな運行を支える。設備の故障時に迅速な対応を行い、運行中断の最小化を図る。 |
安全管理者 | 鉄道の安全基準の遵守と事故防止策の実施が主な役割。安全な運行環境を確保して、事故や障害から乗客とスタッフを守る。 |
運行管理者 | 列車の運行スケジュールの管理、乗務員の配置とシフト管理を担当。効率的な運行計画を立て、スムーズな運行を実現するための調整を行う。 |
鉄道プロジェクト マネージャー | 鉄道プロジェクトの計画、実行、監督を担う。プロジェクトの目標達成に向けて、予算管理、スケジュール調整、チーム管理を行う。 |
上記のほかに「鉄道会社」という括りでいえば、不動産や都市開発の仕事に従事している人もいます。
鉄道会社の多くは駅周辺に土地建物を所有しており、街づくりに深く関わっていることが多いからです。
どのような職種の方が相手でも仕事内容のリサーチは必須なので、上記を参考に深堀りしてみてくださいね。
鉄道系の取材記事はどんなメディアに載る?
鉄道系の取材記事は、主に下記のようなメディアに載っていることが多いです。
掲載されるメディアの種類によって記事のテーマや取材時にヒアリングするべき内容が異なってくるので、あらかじめチェックしておきましょう。
メディアの種類 | テーマ・内容 |
専門誌・業界誌 | 鉄道業界に特化した雑誌。詳細な分析、業界のトレンド、新技術などを深く掘り下げた記事やインタビュー記事を提供。鉄道専門家や愛好家にとって貴重な情報源となっている。 |
新聞 | 鉄道業界の最新ニュース、インフラ開発、業界内の重要人物へのインタビューなどが掲載されることがある。幅広い読者層に鉄道の影響と重要性を伝える情報を提供する。 |
オンラインメディア | 鉄道関連の専門ウェブサイトやニュースポータルサイト。最新の鉄道ニュース、インタビュー、分析記事などを提供。即時性とアクセスの容易さで多くの読者を惹きつけている。 |
ビジネス雑誌 | 経済やビジネスに焦点を当てた雑誌では、鉄道業界の市場動向、経営戦略、業界リーダーへのインタビューが特集されることが多い。ビジネスマンにとって有益な情報源。 |
企業HP・社内報 | 鉄道会社のHPや社内報・会報誌など。インタビュー記事を通して、社内の動き、従業員の活動、重要なプロジェクトのインサイトを提供。従業員間の情報共有と組織の結束を図ることが目的。 |
進学サイト・ 求人サイト | 鉄道業界への進学や就職を目指す人向けのサイト。業界のキャリアパス、教育プログラム、求人情報を提供する。進学やキャリア構築に役立つ重要な情報源。 |
ポッドキャスト・ 動画チャンネル | ポッドキャストやYouTubeなどの動画サービスでも、鉄道は人気テーマの一つ。最近は脚本をライターに外注するチャンネルも多いため、思いがけず関わる可能性がある。 |
鉄道系取材のコツ~①事前準備編~
ここからは、鉄道業界で働く方々に取材をするときのコツを解説していきます。
まずは取材前には必須の「事前準備」で押さえておきたいポイントから解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
業界知識の事前学習&取材相手のリサーチ
鉄道業界の基本的な知識や最新のトレンド、記事の主要テーマに関する情報などについて、事前に予習することが大切です。
業界用語や特有の技術、最新のプロジェクトに関する知識があれば、より深いレベルの質問ができるようになり、インタビューの質が向上します。
鉄道業界には独特の専門用語や技術用語も存在します。もちろん完璧は難しいと思いますが、基本的なものは理解して適切に使用できるようにしておきましょう。
また、取材相手のプロフィール、所属している会社の歴史・事業内容・最近のプロジェクトや成果についても詳しく調べておくと◎です。
そうすることで、より関連性の高い質問が準備できるので、充実したインタビューになるでしょう。
具体的な質問リストを作成する
対人取材では、質問リストを事前に準備しておくのが鉄則です。
質問リストを手元に置いて取材に臨むことでヒアリング漏れを防ぐほか、話が逸れてきたときの軌道修正や、時間配分の判断にも役立ちます。
質問はできるだけ具体的かつ明確で、取材対象者の専門知識や経験を引き出せるように構成しましょう。
取材対象者の過去の発言や公表された情報がある場合は、そこからさらに深い洞察を求める質問をするのも◎ですよ。
ただし、質問が多すぎると余裕がなくなってしまうので、リストアップするのは必要最低限に留めるほうがベターです。
ポイントを押さえつつも、ある程度自由に話してもらったほうが、記事化したときに面白い内容や、他では聞けない裏話などが引き出せることがあります。
スケジュールの都合や安全上の規則を確認する
鉄道業界の専門家は多忙なので、取材の日程は相手の都合に合わせて早めに調整する必要があります。
また、予期せぬ運行障害や緊急事態が発生する可能性もあるため、スケジュールには余裕と柔軟性を持たせておきましょう。
運転士さんや車掌さんなど現場のお仕事をされている方が対象の場合は、ピークの時間帯を避けて業務に支障をきたさないように配慮する必要があります。
また、相手側の鉄道施設や車庫などを訪問して取材をするときは、安全規則を遵守しなければなりません。
取材前に安全に関するガイドラインを確認して必要な準備を整え、現場の指示には必ず従うようにしてください。
鉄道系取材のコツ~とポイント~②インタビュー編~
次に、実際のインタビュー現場で話を進めるときのコツをご紹介します。
聞き手としての姿勢を大切にする
すべての対人取材に共通することですが、相手が話す内容を注意深く聞いて、理解しようとする姿勢が大切です。
人と人の対話においては、相手の話に敬意を払うこと、興味を持って聞くことが、より多くの情報や洞察を得ることにつながります。
これはインタビューに限ったことではなく、プライベートの会話でも同じですよね。
相手の目を見て話を聞く、相槌をうつ&言葉でリアクションをするなど、対話を楽しんでいることを言葉や態度で示してみてください。
そうすると相手も話しやすくなり、コミュニケーションがスムーズに進みます。
ただし、過剰なオーバーリアクションや、相手の話に口を挟みすぎるのはNG。
あくまで対話の主役は取材相手なので、「聞き手」に徹することを意識しましょう。
フォローアップをしながら取材を進める
鉄道業界には独特の技術用語や複雑な概念があるため、どんなに事前準備をしていても当日のインタビューで分からないことが出てくる可能性があります。
その場合はスルーせずに、必要に応じてチェックバックをしながら進めていくほうがベターです。
聞き手としては、「話の腰を折るのではないか」「こんなことも知らずに取材に来たのかと思われたらどうしよう」など、不安になってしまうかもしれません。
しかし、理解が不十分なままインタビューを進めると、記事化するときに苦労しますし、さらに深い話を引き出すことが非常に難しくなるのです。
相手からすると「あまり理解していないな」「話が通じていないな」というのが何となく分かりますから、ごまかさずに質問したほうが逆に信頼に繋がると考えましょう。
相手の興味や関心に合わせた質問をする
少し高度なテクニックですが、取材対象者の興味や関心事に合わせた質問を投げかけてみると、一気に会話が弾むことがあります。
個人的な興味関心に焦点をあてた質問をすると、相手はとても話しやすいので、生き生きとした回答を引き出すことができるのです。
このようなアプローチは、取材対象者とインタビュアーが良好な関係を築くためにも役立ちます。
取材対象者が情熱を持って取り組んでいるプロジェクト、特に関心のある技術確信、鉄道業界の将来に対する個人の見解などについて、ぜひヒアリングしてみてください。
ただし、過去の取材記事などがある場合は質問リストに加えておくことができる一方で、事前の情報がない・少ない場合は、ほぼ現場でのアドリブになります。
インタビュアーの手腕が試されますが、その分リターンも大きいのでぜひチャレンジしてみてくださいね!
鉄道系の取材で役立つ質問例
ここでは、鉄道系の職種の方へのインタビューするときに使える質問例をご紹介します。
どのような記事にも使える基本的な質問から専門性に迫る質問まで、いくつかピックアップしています。
記事の目的や方向性に合わせてセレクトしてみてくださいね!
基本的な質問
「これまでの経歴をお聞かせください。」
「日々の仕事内容について教えてください。」
「鉄道業界の仕事に就こうと思ったきっかけは何ですか?」
「仕事のやりがい・醍醐味は?」
職業人の取材においては、ジャンルを問わず使える質問です。
取材相手にとって比較的話しやすい内容なので、インタビューのウォーミングアップにおすすめでもあります。
「きっかけ」や「やりがい」の部分は、進学・リクルート系の記事ではマストになりますので、必ずヒアリングしておきましょう。
個人の経験に関する質問
「鉄道業界でのご経験から、最も印象に残っているプロジェクトは何ですか?」
「そのプロジェクトで学んだ最も重要な教訓は何ですか?」
こちらも、記事のタイプを問わず使いやすい質問のひとつです。
鉄道業界のリアルや、そこに携わる人々の情熱や苦労を伝えるために役立ちます。
鉄道業界を目指す学生や一般読者にとってはリアルを知るチャンスになりますし、業界で働いている若手や同業他社にとってはモチベーションUPの起爆剤になるかもしれません。
個人にフォーカスする内容は読み手としても興味深いので、記事に使う・使わないは一旦置いておき、ヒアリングしておくと良いですよ。
業界の課題に関する質問
「鉄道業界が直面している最大の課題は何だと思いますか?」
「これらの課題を解決するためには、どのようなアプローチが必要だと考えますか?」
業界の問題点や困難を明らかにする質問は、新聞や業界専門誌・サイトなどで重宝されます。
ここを深堀りすることによって、取材対象者が考える解決策を読み手にシェアして、新しいムーブメントを起こせる可能性もありますので、ぜひヒアリングしたいところです。
取材対象者が持っている専門知識や経験を発信するチャンスであり、聞き手・読み手にとっても価値のある情報源になるでしょう。
技術革新に関する質問
「最近の鉄道技術の進展で特に注目しているものは何ですか?」
「これらの技術が将来の鉄道運行にどのような影響を与えると思いますか?」
業界の課題に関する質問と同じく、こちらも新聞や業界専門誌・サイトなどにマッチしやすい質問ですね。
身近なものでありながら知る機会は少ないですが、鉄道業界の技術は日々進歩しています。
業界のプロに質問を投げることで、技術革新や研究開発の動向について一般的には得られない情報を引き出せるかもしれません。
特にどの技術を重視しているのか、その技術でどのような変化が見込まれるのか等を、詳しくヒアリングしてみてください。
将来の展望に関する質問
「今後10年で鉄道業界はどのように変化すると予想しますか?」
「新しい技術やトレンドが業界にどのような影響を与えると見ていますか?」
経営者・管理職に就いている方や、鉄道業界で長く経験を積んできた方には、ぜひ聞いてみたい質問です。
その道のプロフェッショナルが見据える未来は、一般とは異なる視点から問題提起をしてくれたり、逆に予想外の希望を抱かせてくれたりすることもあります。
「将来の目標は何ですか?」
「個人(または企業)として目指していることや、5年後・10年後のビジョンをお聞かせください。」
個人の展望や目標は進学・リクルート系の記事でマスト、企業の展望や目標はHPや社内報系でマストになります。
その他の記事でもトピックとして使いやすいので、記事のメインとして使う予定がなくても軽くヒアリングしておくと良いでしょう。
持続可能性と環境への配慮に関する質問
「鉄道業界が環境持続可能性をどのように取り組んでいると思いますか?」
「エコフレンドリーな鉄道システムの開発において、最も重要な要素は何だと考えますか?」
玄人向けの質問になりますが、時代的な背景を鑑みると重要な項目になると考えられます。
鉄道の運行には多くのエネルギーを使うため、持続可能性やエコなどの概念と切り離すことはできません。
AIなど最新技術の導入とも深く関わってくる内容なので、かなり読み応えのある記事につながる可能性があります。
ただし、記事の主要テーマから外れている場合には、軽くヒアリングして記事内では小出しにしていく程度に留めたほうが、スマートにまとめられますよ!
鉄道系取材記事のおすすめ5選
最後に、鉄道業界のインタビュー記事で、おすすめのものを5つご紹介します。
小田急電鉄 運転士 高田 諭史さんのインタビュー記事
記事タイトル:現役の電車の運転士に聞きました
東進が運営する職業案内サイト【未来の職業研究】に掲載。少年時代からの夢をかなえて電車の運転士になった高田さんが、乗務の詳細や仕事の醍醐味を語る。1日のタイムスケジュールや、同じ夢を見る学生へのアドバイスも!
JR東海グループ 先輩社員インタビュー(JR東海テレフォンセンター)
記事タイトル:駅業務を経て、テレフォンセンターへ。お客さまに寄り添う姿勢は、どこにいても変わりません。
JR東海グループ 東海交通事業 城北線のサイトに掲載されている記事。テレフォンセンターに勤務する先輩社員から、仕事の詳細・やりがい等が詳細に語られる。鉄道業界を裏で支えるスタッフの思いやホスピタリティを知ることができる記事。
JR秋葉原駅 駅長 田中 秀樹さんのインタビュー記事
ページタイトル:JR秋葉原駅開業130周年記念 駅長インタビュー
秋葉原のファンとお店をつなぐ会員制交流サイト【秋葉原ファン!】掲載。駅や路線に関する内容に加え、田中駅長の生い立ち、街の一員目線でのトークが面白い。フランクにヒアリングしながら肝を抑えたインタビュアーの絶妙な手腕が光る。
九州旅客鉄道株式会社取締役常務執行役員 森 亨弘さんのインタビュー記事
記事タイトル:「ミライの種」JR九州 森取締役常務執行役員インタビュー 前編/後編
IT分野の情報発信メディア【ミライコラボ】掲載。鉄道業界のDXに向けたJR九州の取組に迫る記事。AI、IoT、ビッグデータ等の活用等、鉄道を利用しているだけではなかなか知り得ない「鉄道業界の現状と未来」を垣間見ることができる。
長良川鉄道 保守作業職員 阿藤さんのインタビュー記事
記事タイトル:今日もダイヤ通りの運行を縁の下で支えています
長良川鉄道の採用サイトに掲載された先輩インタビュー記事。鉄道の安全な運行を支える保守作業員の仕事内容が、たっぷりと詳細に語られている。リアルが伝わる言葉や写真が、記事の魅力とインタビュイーの情熱を一層引き立たせている。
まとめ
鉄道はファンの多い業界で、鉄道業界の仕事に憧れる人たちも多いため、世の中に出ている情報の量は比較的多いです。
その一方で、実際に取材をしてみると、なかなか利用者やファンの立場からは知ることができないストーリーが満載で、非常に興味深い分野でもあります。
上手にコミュニケーションを取りながらインタビューを進めて、鉄道業界にとっても読者にとっても有意義な記事を書けるようにしたいですね!