スポーツトレーナー、パーソナルトレーナー、インストラクター…スポーツ・フィットネス系取材のコツは?

スポーツの世界には、選手やアスリートを支えるプロフェッショナルたちがいますが、彼らが活躍するのはプロの世界だけではありません。

一般の方々でも、スポーツジムやフィットネスクラブなどに通っていると、インストラクターやトレーナーは日常的に馴染みのある存在ですよね。
スポーツは老若男女だれでも楽しめて、健康管理にも大いに役立つことから、世間からの関心度が高く取材ニーズも非常に高いです。

そこで今回は、プロ・アマチュアを問わず「スポーツをする人」の指導&サポート役であるトレーナーやインストラクターの方々への取材について、コツやポイントを解説していきたいと思います。

【こんな方におすすめ!】

  • はじめてスポーツ・フィットネス業界の取材オファーを受けた方
  • スポーツ・フィットネス業界の知識がなく、インタビューに不安がある方
  • 質の高い取材をして、読みごたえのある記事を書きたい方

スポーツ関連の仕事の種類は?

スポーツやトレーニング、フィットネスなどの指導にあたる職業といえば、トレーナー、インストラクター、コーチなどが思い浮かぶと思います。
しかし、それぞれの役割を明確に区別して答えられる人は、あまり多くないのではないでしょうか。

スポーツ系の取材をする際には、インタビュイーの職業について、ある程度の知識を持っておく必要があります。
まずは、スポーツに関連する代表的な職業の種類と、仕事内容を整理しておきましょう。

スポーツトレーナーとは?

スポーツトレーナーは、選手やアスリートの健康と安全面に関わる専門家です。
栄養指導、怪我の予防、身体のメンテナンス、ときにはメンタルケアなども行いながら、体調や健康をサポート・管理します。
必要に応じて怪我の応急処置やリハビリを担当することもあり、多くのプロスポーツ選手やアスリートは、個人やチームの専属トレーナーによるサポートを受けています

また、ジムでマシンの操作方法を教えてくれるのもスポーツトレーナーであることが多いですし、最近は利用者一人ひとりにトレーナーがつくパーソナルトレーニングジムが増えているので、一般の人々にとっても意外と身近な存在なんですよ。
スポーツトレーナーには、医学や理学療法に関する専門知識と技術が求められるため、柔道整復師などの国家資格を持っていることが多いです。

スポーツインストラクターとは?

スポーツインストラクターは、特定のスポーツおよびフィットネスにおける技術やスキル、知識の指導に関わる専門家です。
そのスポーツの基本的なテクニック、戦略やルールを教えたり、パフォーマンスを向上させるためのサポートをしたりします。
ジムで開かれる「エアロビクス教室」や「ボクササイズ教室」などの指導を担当しているのは、まさにスポーツインストラクターの方々ですね。

スポーツインストラクターの方々は、個人の年齢、体力、目的や目標に沿って、最適な練習メニューを提案してくれます。
インストラクターに必須の資格はありませんが、そのスポーツに特化した教育やトレーニングを受けている方が務めるのが一般的。
指導する相手と一緒に体を動かしながら教えるため、インストラクター自身にも体力や技術が必要になるのです。

コーチとは?

コーチは、スポーツチームまたは個人選手のトレーニングとパフォーマンスの向上に責任を持つ専門家です。
主な役割は、選手たちの技術的・戦術的・精神的な成長を促すこと。
技術やスキルの向上、ゲームプランや戦術の策定と適用、パフォーマンスの分析と改善点の特定、モチベーションや精神力の維持・向上、チームビルディングなど、個人やチームを総合的にサポートするのがコーチの仕事です。

プロスポーツ選手やアスリートはもちろん、一般の方でもクラブチームなどに所属していると、コーチのお世話になる機会があります。
コーチに求められる資格や経験は、指導するスポーツや指導する相手のレベルによって異なります。
いずれにしても「統括責任者」のような立場ですから、そのスポーツに関する深い知識、技術やスキル、リーダーシップや指導センスなども求められるでしょう。

スポーツ指導者への取材記事の役割は?

対人取材をする際には、「どんな読者層に向けて」「何を伝えるための記事なのか」を、きちんと把握しておく必要があります。
ここの理解がズレていると、記事の方向性を定めることができず、適切な質問を投げることができないからです。

そこで、スポーツトレーナー・スポーツインストラクター・コーチなど、スポーツ指導者への取材記事が持つ役割や目的について解説していきたいと思います。
どれが自身の案件に当てはまるのかをイメージしながら読んでみてくださいね。

スポーツジムやフィットネスジムのPR

2010年前後までの「スポーツジム」といえば、プールや大浴場を完備した大型ジムが主流でしたが、近年のジムは多様化していますよね。

マシントレーニングやスタジオレッスンに特化した中型・小型ジム、24時間営業のコンビニジム、パーソナルトレーニングジムなども人気です。
このようなジムは必要とする空間が小さいため、都市部を中心に急増中。

近年のスポーツ・フィットネス業界は競争が激しく、PRのためにメディアの取材を受けたり、公式HPやオウンドメディアに取材記事を載せたりする事例が増えています。

進学や就職に関する情報提供

スポーツ選手やアスリートを支える職業や、何らかの形でスポーツに関連する職業に就きたいと希望する学生の多くは、体育大学や体育系の学部、専門学校などに進学します。

大学や専門学校は、入学希望者へのPRとして、スポーツトレーナーやインストラクター、コーチなどの指導者として活躍している卒業生のインタビューを、パンフレットやHPに載せていることが多いです。
また、スポーツ系の大学や専門学校に通っている学生に向けたリクルート情報としても、取材記事が大きな役割を果たしています。

トレーニングやフィジカルケアの情報提供

高齢化社会においては、介護予防への意識もあり、健康志向が高まっています。
また、ダイエットやシェイプアップの観点からも、スポーツやフィットネスは欠かせないものという認識がありますよね。

スポーツやフィットネスに関する取材記事は、一般の読者にトレーニングやフィジカルケアに関する情報を提供するという役割も担っています。
年代や目的に合わせたトレーニングやエクササイズの情報は幅広い読者層から人気なので、メディアの種類を問わず一定のニーズがあると言えるでしょう。

スポーツの普及促進

有名なスポーツ選手・アスリートのトレーナーやコーチ、人気スポーツのインストラクターなどの取材記事は、そのスポーツの普及促進に寄与することがあります。

選手本人が発する言葉と同様に、選手や競技を下支えしているプロフェッショナルたちの言葉には、圧倒的な説得力があるのです。
場合によっては、選手のインタビューよりも閲覧数がのびることも珍しくありません。

取材記事を読んで、競技の奥深さを知って興味関心を高める読者や、裏方の活躍に感動する読者「自分も同じような仕事がしたい!」と夢見る若者も増えることでしょう。

スポーツ選手や指導者への情報提供

スポーツ指導者が実践する戦術、トレーニングや練習の方法、哲学などを紹介する記事は、同じスポーツの選手はもちろん、指導者・関係者にとって、非常に価値のある情報源になります。

大学駅伝や高校野球などで、強豪校の指導者(監督やコーチ)がノウハウを話す番組や記事が出ると、大きな注目を集めることがありますよね。
メンタルトレーニングやチームメイキングなどについては、他競技の選手・指導者も大いに参考にできる部分があるでしょう。

幅広い読者層に向けた参考事例・ストーリーとして

スポーツ業界以外の人々にとっても、成功した指導者の考えや経験から学べることは多く、幅広い層にインスピレーションを与えられそうです。

たとえば、仕事で部下の指導にあたっている管理職の方々、学校の教師や習い事の先生、医療や介護の分野に携わる人々も、スポーツ指導者のノウハウを間接的に活かすことがあると聞きます。
また、スポーツは一般の人々からも関心度が高いトピックなので、ひとつのストーリーとして取材記事を楽しむ読者層もいます。

スポーツ系の職業の方に取材するときのコツ・ポイント

それでは、スポーツ系の職業(トレーナー、インストラクター、コーチなど)に就いている方に取材するときのコツやポイントを、具体的に解説していきます。
事前準備段階〜インタビュー現場まで、時系列でポイントを挙げていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

取材対象や業界についてリサーチする

インタビュー前の事前調査は、対人取材の基本です。
事前調査を行うことで、相手の話を理解しやすくなりますし、こちらからも的確な質問を投げることができ、インタビュー当日の対話がスムーズに進みます。

スポーツ系の職業の方々に取材をするときには、まずインタビュアーが従事している職種(トレーナー、インストラクター、コーチなど)および仕事内容と、指導している競技・スポーツについての基礎知識を得ておきましょう。

ジムやスタジオのPRを目的とした記事を書く場合は、公式HPやSNSに目を通して、施設やメニューの特徴やアピールポイント、ざっくりとした料金体系なども把握しておくと良いですね。
上記に加えて、業界全体のトレンドや課題、専門用語などもリサーチしておくと、質問する内容に深みが出るでしょう。

記事の目的とリサーチ内容を踏まえて質問リストを作る

記事の目的(どんな読者層に向けて、何を伝えるための記事なのか)を把握して、一通りの事前リサーチを終えたら、インタビュー当日に質問したい内容をリストアップしましょう。
質問リストを手元に置いておくことによって、当日のヒアリング漏れを防ぐことができますし、話が逸れてきたときの軌道修正にも役立ちます。

抽象的な質問よりも、具体的で明確な質問をしたほうが有益な情報は得られやすいですが、「Yes/No」で答えられる質問よりも、詳細な回答を引き出すオープンエンドの質問がおすすめです。

インタビュイーに自由に話してもらうことで、興味深い内容やキラリと光る言葉を引き出せるので、余白を残すために「ちょっと少ないかな?」と感じるくらいの質問数に抑えるのがコツですよ。

適切なタイミングでアポイントを取る

スポーツやフィットネス業界の取材では、試合やトレーニングの直前・直後などのインタビューはおすすめできません。
相手が疲れていたり忙しかったりするタイミングでインタビューを試みても、十分な情報を得られない可能性があるからです。

スポーツやフィットネスの現場にいる人々は、言わずもがな日々体力を消耗していますし、指導者の立場ならではの精神的な緊張感もあります。
プロスポーツ選手やアスリートのサポートをするトレーナーやコーチはもちろん、一般のジムに勤めているトレーナーやインストラクターの方々に対しても、スケジュールに関しては最大限の配慮をしてください。
そうすることで、インタビュイーの仕事に対するリスペクトも示せるので、信頼関係の構築にもつながります。

相手に敬意を示しつつ、リラックスモードで

インタビューの現場では、リラックスできる雰囲気づくりを心がけましょう。
負担が少ない取材日時を設定したり、インタビュイーがリラックスできる場所を選んだりすることも大切です。

インタビュー中は、さりげなく対話をリードしながら「聞き役」に回り、相手が安心して話せる雰囲気にできると良いですね。
こちらが緊張していると相手にも伝わってしまいますし、スポーツ・フィットネス業界には快活で明るい方が多いので、自分自身もリラックスモードでインタビューに臨むのが吉。
聞き手と話し手の双方がリラックスしてこそ、自然な対話ができ、深い内容を引き出せるはずです。

ただし、目の前にいるのはスポーツ・フィットネス業界で研さんを積んできた専門家なので、相手の知識や経験に対するリスペクトを忘れないようにしてくださいね。

個人的な経験や感情にも踏み込んでみる

スポーツは技術や戦略だけが全てではなく、個人の経験や感情が重要なファクターになる部分が大きいです。
これは必ずしもプロやアスリートの世界に限ったことではなく、趣味としてスポーツ・フィットネスを楽しんでいる人々にとっても同じこと。

トレーナー、インストラクター、コーチなどの職業に就いている人々は、レベルやフィールドを問わず、自身がサポートする相手に対して、常に真摯に向き合っています

だからこそ、スポーツ業界やフィットネス業界の取材では、成功や失敗の経験、困難を乗り越えるための戦略、パフォーマンスに影響を及ぼす心理的な側面などについて尋ねると、読者にとって興味深い記事になります。
経験や感情を踏まえた体験談は、スポーツをする人・指導する人はもちろん、幅広い読者の心に響くはずです。

スポーツ・フィットネス系の取材で使える質問例

次に、スポーツ業界やフィットネス業界の取材で外せない質問・役立つ質問の例をご紹介していきます。
この業界の取材記事は目的が多様なので、記事の趣旨・方向性別におすすめの質問をまとめてみました。

進学系・リクルート系の記事の場合

スポーツ・フィットネス系の取材の中でも、進学系やリクルート系の記事は特に需要が高いです。
未来の後輩になるかもしれない読者に向けて、学校や職場の特長、仕事の魅力が伝わるような質問をすると良いでしょう。

「スポーツ・フィットネス業界の仕事を志したきっかけは何ですか?」
「この仕事に就くために必要なスキルや資格は何ですか?」
「この学校(または職場)を選んだ理由は何ですか?」
「学校で学んだことを、今の仕事にどのように活かしていますか?」
「仕事のやりがい、印象に残っている出来事を教えてください。」

ジムなど施設のPRを目的とした記事の場合

ジムやスタジオなどのPRを目的とした取材記事の場合は、ユーザーに向けて施設の魅力を伝える質問や、利用に際しての不安を解消できるような質問がおすすめです。

「この施設の特長と、イチオシのレッスンやコースについて教えてください。」
「利用者の方と関わるときに、心がけていることは何ですか?」
「スポーツが苦手な方でも、トレーニングのメニューをこなせますか?」
「苦手意識がある方や体力に自信がない方を、どのようにサポートしていますか?」
「これまでに最も達成感を抱いたエピソードを教えてください。」

選手や指導者への情報提供を目的とした記事の場合

スポーツ選手や他の指導者に有益な情報を提供するためには、専門的な内容にも踏み込む必要があります
技術的、戦略的、心理的な洞察を引き出せるような質問を投げかけてみましょう。

「一人ひとりのトレーニングメニューは、どのように考案していますか?」
「新しい技術や戦略を教えるときには、どのようなアプローチをしていますか?」
「チームの結束を強化するための活動や練習方法はありますか?」
「指導する相手のモチベーションを維持・向上させるための施策を教えてください。」
「指導者としてのキャリアの中で最も印象に残っている瞬間や決断は何ですか?」

トレーニングや健康管理の方法を紹介する記事の場合

トレーナーやコーチのサポートを受けていないスポーツ愛好家や、健康管理の一環として運動を取り入れている一般の方、身体の機能維持のためにリハビリをしている方などを想定して、有効なトレーニングやストレッチの方法を質問すると良いでしょう。

「トレーニングやストレッチの頻度・強度は、どのように決定すれば良いですか?」
「トレーニングやストレッチをするときに避けるべきことはありますか?」
「ある特定の目的(筋肥大、持久力向上、特定部位のシェイプアップなど)を達成するための、特別なテクニックや方法はありますか?」
「トレーニング後の回復・リカバリーについて、おすすめの方法を教えてください。」
「プロテインやサプリメントの活用方法について教えてください。」

スポーツ・フィットネス業界のおすすめ記事5選

最後に、スポーツ業界やフィットネス業界で活躍している人たちの、おすすめインタビュー記事をご紹介します。

パーソナルトレーナー 荒井 進之介さんのインタビュー記事

記事タイトル:アスリートの最高のパフォーマンスを引き出すパーソナルトレーニングが強み!

【マイベストプロ東京】掲載。スポーツチーム等へのトレーニング指導や、一般向け出張パーソナルトレーニング等を提供するUnited Performanceの代表、荒井さん。幅広いフィールドでトレーナーとして活躍してきた同氏が「スポーツ村」創設に向けた構想を語る。

スポーツトレーナー 齊藤 邦秀さんのインタビュー記事

記事タイトル:「フィットネス=人生そのもの」。トレーナーの第一人者・齊藤邦秀、「スポーツ業界への関わり方は無限大」

【スポジョバ】掲載。数々のトップアスリートと契約を結ぶ会社に新卒で就職、32歳のときにフィットネス業界へ転身・独立。スポーツトレーナーとフィットネス業界、それぞれの特徴や醍醐味が実体験をもって語られる。これから進路選択をする学生さんは必読!

スポーツトレーナー 鮫島 洋一さんのインタビュー記事

記事タイトル:34歳で開業、国際的スポーツ大会でトレーナーの経験も。3つの顔を持つ若手社長

【日本健康医療専門学校】のHPに掲載。(株)SAMONA代表取締役・「サモーナスポーツ整骨院」院長として、身体のケアをサポートする鮫島さん。トレーナーという仕事の魅力、必要な資格、信念やビジョンなど、盛りだくさんの内容が詰まっている。

「ハコジム」パーソナルトレーナー 北本 祥己さんのインタビュー記事

ページタイトル:ハコジムトレーナーインタビュー記事

24時間営業の個室ジム「ハコジム」のHPに掲載されたスタッフインタビュー。トレーナーになるまでの経緯、仕事に対する思い、実体験などが親しみやすい口調で語られ、施設のアットホームな雰囲気が、読者にも間接的に伝わってくる記事。

スポーツインストラクター 玉代勢 翔さんのインタビュー記事

ページタイトル:教育関連産業 WorkingStyle スポーツインストラクター玉代勢 翔さん

高校生に向けて沖縄の産業・仕事を紹介するメディア【COMPASS】に掲載。県内のスポーツクラブに勤める玉代勢さんの記事。シンプルな記事構成で、学生が知りたい内容をしっかりと網羅している。読みやすい配置と読者の目を引くページデザインも魅力。

まとめ

スポーツ関連の仕事に従事するプロフェッショナルたちは、プロスポーツ選手やアスリートだけではなく、一般の人々にとっても意外と身近な存在です。
スポーツやフィットネスは、心身を健康に保つために重要なファクターのひとつ。
高齢化や健康志向の高まりを受けて、スポーツの専門家への需要は今後ますます上がっていくでしょう。

スポーツ関連の仕事に就きたい方、スポーツやフィットネスを安心して楽しみたい方、スポーツ・フィットネス業界に貢献する同業者の方々など、さまざまな読者に有益な情報を提供できるように、この記事を取材の参考にしてみてくださいね。